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煙草とノボリ

「(あ……煙草の匂い)」



終電を見送り、後は車両点検だけとなった今日の業務。ランプを片手に暗いホームを歩いていると、進む先からほのかに煙草の匂いが漂っていた。進むにつれて匂いが強くなる。空気の逃げ場がなくて、匂いが籠っているようだった。煙草は好きじゃない。体に悪いし、好きな匂いじゃない。というより、煙草を受け付けない。そうは言っても奥まで行って点検を済ませないと帰れない訳で。誰が吸ってるんだろう、家に帰ってからにしろ、なんて思いを馳せながら進んで行った。

***

「あ、」
「おや、見付かってしまいました。」
「ノボリさん、だったんですか。煙草。」
「少々我慢が効かなかったものですから。」
「意外です。ノボリさんが煙草吸うなんて。」
「まぁ、時々ですよ。今みたいに我慢が効かなかったか、若しくはバトルで負けた時なんかも吸いますね。」



一定の距離を保ちつつ私はノボリさんに声を掛けた。お酒も弱そうだし、体に悪い煙草なんて以ての外です!なんて怒りそうなこの人が吸っているなんて、純粋に驚いた。ただ、その姿形はとっても様になっているから、何となく昔っから吸ってるんだろうなと想像できた。



「あまり吸い過ぎないで下さいね。体に悪いです。」
「はい、承知しております。」



ポケットから携帯灰皿を取りだして煙草の火を消した。ノボリさんが煙草吸うことなんて自由なのに余計なことを口走ってしまった。ノボリさんの苦笑いに多少の罪悪感を覚えつつ、軽く返事を済ませて私は車両点検を続けた。



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