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新婚アニクダ夫婦は旦那が過保護過ぎて夜しか眠れない。

→アニクダとエメットは親戚



「そんなに慌ててどうしたんです?」
「ノボリ兄さん……。」



いつもの倍の速さで書類を仕上げていると、コーヒーを持ってきてくれた兄さんがあり得ないとでも言いたげな表情をしていた。サボリ魔の兄さんからしてみれば今の僕の行動はあり得ないことなのかもしれないが、今はそんなこといちいち気にしてられない。コーヒーを持ってきてくれたことには感謝するし有難いけど、早く仕事してくれないかな。



「ありがとう。実は、今エメットが家に来てるんだ。」
「エメットが?それはまたどうして?」
「名前ちゃんのご飯が食べたいんだって。あんまりにも駄々こねてうるさいし、仕事もしないしで許可しちゃったんだよ……。」
「クダリが名前様のことで折れるなんて相当だったんですか?」
「それもそうだけど、名前ちゃんがたまにくらい人を呼びたい、って言うからさ……。」
「そうでしたか。」



ひどく興味はなさそうだが、人に話すと少し楽になる。コーヒーを一口飲んで、椅子に座ったまま背伸びをするとボキボキ、なんて音がした。その音を聞いて、またあり得ないと言いたげな表情をしたノボリ兄さんは放っておいて、僕は再び書類にペンを走らせた。

***

家に帰れば、二人は鍋を用意して僕を待っていてくれたらしい。帰ると同時に鍋を煮始めたので、僕は早々にコートと鞄を部屋に置いてきた。



「もうすぐ出来ますから、ちょっと待ってて下さいね!」
「わお!ボク鍋って食べるの初めてなんだ!」
「それは良かったです!美味しいですよ!」



キャッキャウフフと話している二人を見るとなんだか変に心が和んでしまった。名前ちゃんの隣に腰を下ろし、鍋の様子をぼうっと眺めるふりをして二人の様子を黙って見ていたら、不意にエメットが口を開く。



「クダリクダリ!凄く気になることがあるんだけど、聞いていい?名前には黙秘権使われちゃった。」
「エ、エメットさん!」
「(なんで黙秘権?)内容にもよるけど……。なに?」
「あのねぇ、セックスの方はどうなのかなーって!」
「なに?エメット酔ってるの?」



疲れと突拍子な内容に、普段ならば飛び上るほど恥ずかしい内容にも、なんだか普通に対応出来てしまった。そうだ、今度からこういう反応すればいいんだ。いや、今はそんなことどうでも良くて。にこにこ笑うエメットの口から、まさかそんな言葉が出るとは思わなかったよ。そりゃ、名前ちゃんも黙る訳だ。



「そういうのは他人に言いふらすことじゃないんだよ!」
「本当クダリってばお堅い!」
「とにかく!君に言うつもりはないから!僕も黙秘権!」
「えー!卑怯!ズルイ!」



仮にも、これから微笑ましい夕飯の席でなんてことを言うんだ。チラリと名前ちゃんを見遣れば、薄っすらと頬が赤らんでいるのが分かる。ちょっと、なにこの反応凄く可愛いんだけど。
つられるように僕まで熱くなって、サッと視線を逸らしたら、ニヤニヤしてるエメットと目が合った。これは可愛くない。



「まぁ、やる事はやってるみたいだね?」
「い、いい加減に!」
「今夜3人でどう?」
「今すぐ帰れ。」



冗談だよ、と笑うエメットの言葉はまったく冗談に聞こえなくて困る。照れてる場合じゃなかったよ。
僕は照れを隠すかのようにお酒を呑んだ。隣でお酒を止める名前ちゃんの声が聞こえたけど、少しくらい、と無視したのがいけないんだ。

***

「ちょっとエメット!その箸鍋に入れないでよ。名前ちゃんと間接キスしようたって、そうはいかないよ!」
「いや、そんなつもりないけど!?」
「クダリ君飲み過ぎだよ……。」



呑み過ぎてなんかない。僕は正常だ。空になったビールを置いて、次の缶ビールを持ってくるようエメットに頼んだら、名前ちゃんが止めに入った。意味が分からない。机ばんばん叩いてあー、とか、うーとか呻ってたら結局名前ちゃんが取ってきてくれた訳だけど(エメット使えない)、その間後ろ姿を眺めていたら、なんだかムラムラしてきちゃった。エプロンっていいなぁ。



「クダリって酔っ払うと別人なんだね……。酔ったところ初めて見たよ……。」
「ちょっと鍋突っつかないでよ。エメットみたいな遊び人と同じ鍋突っついて名前ちゃんが孕んだら、どう責任取ってくれるんだ!」
「どんな理屈!?あり得ないでしょ!」
「まぁ、そんなことしても無駄だけどね!」
「…詳しくいいかな?クダリ。」
「ちょっとエメットさん黙っててくれます?」



だんっ、と乱暴に缶ビールを置いた名前ちゃんが戻ってきた。ありがとうとお礼を言って頬にキスすると、すぐに顔を真っ赤にして慌て出すもんだから、つい意地悪したくなっちゃった。尚も引き寄せて、バードキスを繰り返せば、嫌々と押し返されてしまった。



「わお、とっても大胆!」
「ちょっ、ちょっとクダリ君!やーめーてー!」
「酷い!名前ちゃん僕のこと嫌いなの?エメットなんて家に連れ込んで!浮気?そんなの絶対に許さないよ!僕と結婚しておいて……っ!エメット殺す!」
「とんだとばっちりなんだけど!?」



エメットに威嚇する意味を込めて名前ちゃんのことをぎゅうっと抱き締めた。



「エメットさん、ごめんね?」
「別に平気だよ。」
「悪酔いするとたまにこうなっちゃうんだよね……。」
「そうなの?あんまりクダリと呑むことなかったからなぁ。それ以前にクダリが酔っ払うまで呑むこと自体が珍しいから、こんなクダリ初めて見たよ。」



ちょっと、僕のこと放ったらかしにして二人でお喋りだなんて、どういうこと?このまま僕を除け者にして、そのままエメットが名前ちゃんをお持ち帰りしちゃうつもり?お持ち帰りしたエメットはおもむろに名前ちゃんの服に手を掛けて、「あっ、だ、だめ…私にはクダリ君っていう旦那がいるから……。」「なに言ってるの?そんなの、着いて来たんだから今更でしょ?」「で、でも……!」「ほら、もうこんなにしちゃって。」「あっ、んぅ…!」「ふふ、名前ってばやらしい。クダリになんて言い訳するの?」とか言って柔らかな胸を上下に揉みしだいてから、胸の突起に口に「全部声に出てますけど!!!」



「これは……クダリがむっつりである由縁だね……。」
「変な妄想しないで!」
「違うって!エメットはエロ魔人だから常にそういうことしか考えてないんだって!僕はエメットから名前ちゃんを守ろうと!」



真っ赤になった名前ちゃんは林檎みたいで美味しそうだ。ああ、やっぱりエメットになんて絶対にあげない!照れてる顔も可愛いけど、どうせなら僕に釘付けになってる顔が見たいなぁ。
そんなことを考えてると、自然に体が熱くなってくるから、そうだ、寝室に行こう。立ち上がって名前ちゃんを担ぎあげた。ああ、そうだ。



「食べ終わったら後片付け宜しく。終わったら帰ってね。」



夫婦の営みに部外者は立ち入り禁止だからね。



――――
リクエスト、アニクダより鮗さんへ。



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