Kazuki Chiba

海を見つめて PAGE.1


夏。

サッカー部のみんなと海に来ている。

普段から練習で鍛えているだけあってみんな元気。

私もその元気に負けないように楽しく遊んでいたのだけど…

少し疲れたので散歩に出掛けた。



海風が心地よい。

自然と浜辺に沿うように歩いていく。

「彼女、ヒトリ?遊ばない?」

目の前に見知らぬ男の人が立ちはだかった。

「あ、あの…一人じゃないんで…」

言い返したものの、腕を掴まれさらに詰め寄られる。

「そんなこと言わないでさー。あっち行こうよ。」

腕を引っ張られる。

「離してください!」

私が大声を上げたと同時に腕が離れ、目の前にいたはずの男の人が消えた。

わけがわからず呆然としていると後ろから声が聞こえた。

「鍵谷さん!」

振り返ると千葉先輩が走ってくる。

私も千葉先輩の元へと走る。

「鍵谷さん、大丈夫か?」

安心したせいで涙が出てきて頷くことしか出来なかった。

「おい!何してくれるんだよ?」

男の人が私達の前にやって来た。

「ケガしたじゃねーか!慰謝料払ってもらうぞ!」

千葉先輩は私を庇うように立ちはだかった。

「慰謝料?おかしなことを言うものだな。」

千葉先輩は相手を見下ろすような視線で眼鏡を押し上げた。

「これは正当防衛だ。先に彼女に手を出したのはそちらだろう?」

相手は千葉先輩の迫力に怯んでいる。

「お、俺はケガさせてねーだろが…」

「わかった。では警察に行こう。話はそこでしよう。」

千葉先輩がそう言った瞬間、相手は走って逃げて行った。



私はその場に座りこんでしまった。

「鍵谷さん、怖い思いをさせて、すまなかった。」

「そんな…千葉先輩が謝ることじゃ…」

私の体がフワッと浮いた。

「日陰に移動しよう。歩けないだろう?」

私をお姫様だっこして歩く千葉先輩。

やがて大きな木の下に着いた。

「いつまでもこうしていられればいいのにな…」

そう言って私をそっと下に降ろした。

思いがけない千葉先輩の言葉に私の心はざわめく。

「私も…同じ気持ちです…」

恥ずかしくてうつむいてしまった私の隣に千葉先輩が座る。

「鍵谷さん、ありがとう…」

そして私達は青からオレンジに変わるまで、そっと寄り添いながら海を見つめたのだった。



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