彼のほほえみ PAGE.10
やって来たのは広い芝生のある大きな公園。
シートを敷き、二人で座る。
遊具も何もない広い芝生にはさわやかな風が吹き抜ける。
「鍵谷さん、いい所だな…」
そういって寝転がる千葉先輩。
「喜んでもらえてよかったです。ここは幼稚園の遠足で毎年来てるんですよ…って?」
千葉先輩を見ると穏やかな表情で眠っていた。
(千葉先輩ったら…何だかいろいろな表情が見られて嬉しいな…)
私も千葉先輩の隣に寝転がるとそのまま眠ってしまった。
目が覚めて隣を見ると千葉先輩の姿が見当たらない。
不安になりその場を離れ千葉先輩を探す。
(先輩、どこ?!)
どうしても見つからない。
不安が募る。
その時だった。
「鍵谷さん。」
後ろを振り返ると千葉先輩の姿があった。
ホッとした私はその場にしゃがみ込んだ。
「千葉先輩、どこに行ってたんですか?私、心配で…!」
泣きそうになりながらそこまで言うと千葉先輩は優しく私を抱きしめた。
「すまない。君にこれを渡したくて…」
身体を少し離して差し出したのは、色とりどりの花束。
「俺が女性に花を贈るのは君が初めてだ。できれば君で最後にしたい。そして先輩という立場から卒業したい。……君のことが好きだ。」
「千葉先輩…私も先輩のこと好きです。」
千葉先輩のほほえみは優しく暖かく穏やかで…
私はそのほほえみを心に刻み、そっと目を閉じたのだった。
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