Kazuki Chiba

彼のほほえみ PAGE.9


2日後。

私は千葉先輩の病室にいた。

退院する先輩に付き添うためだ。

「わざわざすまない。来てもらって…」

「いえ。大したことなくて無事に退院でよかったです。」

「ありがとう。鍵谷さんには随分と迷惑をかけたな。」

「迷惑なんて思ってません。心配はしましたが…」

優しく微笑む千葉先輩の表情にドキッとする。

「おわびに…食事にでも招待したいのだが?」

「そんな!私は何も…それより私に退院のお祝いをさせてください。」

「…いいのか?」

「もちろんです!」

「じゃあ、お言葉に甘えるとしよう。」



そして翌日。

待ち合わせた場所へ向かうとすでに千葉先輩は来ていた。

「先輩、お待たせしてすみません。」

読んでいた本を閉じながら優しく微笑む千葉先輩。

「いや、俺も今、来たところだ。…さて、どこへ案内してもらえるんだ?」

「じゃあ…行きましょう。」

少し離れた所に停めておいた車に着いた。

助手席のドアを開け、千葉先輩に乗るように促す。

私も乗り込み車を走らす。

「意外だな。」

千葉先輩が呟く。

「え…何がですか?」

「鍵谷さんが運転しているなんて、想像もつかなかった。」

「ふふっ。私もいい年なんですから、運転ぐらいしますよ。」

「いい年…若干気になる発言だな。俺はさらにいい年なのか?」

「あっ!そういうわけじゃ…!って一つしか違わないじゃないですか!」

「その一つが恨めしく思う。たった一つ違うだけで俺はいつまで経っても君の先輩だからな。」

「えっ…?」

意味がわからずオロオロしてしまう。

「すまなかった。運転に集中してくれ。」

そう言われ、とりあえず運転に集中する。

そして目的地に到着した。

「先輩、着きましたよ。」



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