Kazuki Chiba

彼のほほえみ PAGE.5


千葉先輩の笑顔に少しずつ慣れてきたある日。

いつも通り練習していたら、園児の一人が私に言った。

「樹々せんせい。あそこに誰かいるよ。」

指差した方を見ると…

園舎の2階の窓から乗り出そうとしている子供がいた。

「ダメ!あぶない!」

私が叫ぶと同時に私の横を千葉先輩が走り抜けた。

今にも落ちそうな子供を見つめながら私も後を追う。

(お願い!落ちないで!)

私の願いが届かず窓枠を越えて下に落ちていく。

(先輩!間に合って!)

私はありったけの力を振り絞り叫んだ。

「先輩!お願い!!」

砂ぼこりが舞って先輩の姿が見えない。

ようやく追いついた私は砂ぼこりをかき分け叫ぶ。

「先輩!どこですか?!」

少し視界が開け、影を見つけた。

「先輩!」

千葉先輩に駆け寄ると、先輩の腕の中には子供がいた。

「よかった…」

安心して涙がこぼれる。

「鍵谷さん、この子を…」

千葉先輩から子供を受け取ると、駆けつけた母親の元へ向かった。

「ママー!」

元気に呼ぶ声にホッとした母親が泣きながら私にお礼を言う。

「私じゃなくて千葉先生に…」

そう言って千葉先輩の方へ振り返ると…

千葉先輩は頭から血を流してその場に倒れていた。



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