17歳のバースデー PAGE.2
急いで片付けを済ませ、校門に行くとすでに千葉先輩はいた。
「先輩、お待たせしてすみません!」
走って駆けつけた私にフッと千葉先輩は笑う。
「そんなに慌てなくてもいい。俺は逃げたりなどしない。」
「でもお待たせしてると思うと…」
走って乱れた私の髪を撫でながら呟く。
「君は相変わらずだな。でもそこが鍵谷さんのいいところでもあるがな。」
顔を赤くした私の背中をポンと叩いて歩き出す。
「それより、どうした?何かあったのか?」
「いろいろです。選手権終わって気が抜けたのと先輩達が引退して寂しいのと戸惑いと…」
「戸惑い?」
「はい。先輩が注目されて取材を受けたり、雑誌に載ったりするのは嬉しいんですが、遠い存在になったような気がして…」
「そんなことない。騒がれるのは今だけだ。俺は神坂とは違ってこの先は真剣にプレイするつもりはないからな。」
「えっ?でも大学でも続けるんじゃないですか?」
「大学ではサッカーより学業に専念したい。次の夢につなげるために…」
「次の夢…?」
「そうだ。国立でプレイする夢は叶った。次は指導者として国立に行きたい。だから俺は教師を目指す。」
「教師…」
先輩の新たな夢に私は思わず笑顔になる。
「先輩なら必ず監督になっても国立へ行けますよ!」
私の言葉を予想していなかったのだろう。
千葉先輩は驚いた表情を見せる。
「先輩はチームをまとめ上げる力を持ってます。選手権で証明してくれました。」
「ありがとう。君にそう言ってもらえると、本当に叶う気がする。」
「先輩…私にお手伝いできることはないですか?」
「鍵谷さんにしかできないことがある。」
「私にしか…?」
「目を閉じて。」
先輩に促され目を閉じる。
「開けていいよ。」
私の胸元には選手権の優勝メダル…
「先輩!これは受け取れません!こんな大事なもの…」
「大事なものだからこそ、受け取って欲しい。俺一人では勝ち取れなかったメダルだ。君の支えがあってこそのものだから。それに…」
いつも以上に真剣な眼差しの千葉先輩。
「俺は君とともに夢を叶えたい。大学を卒業したら、このメダルと一緒に俺の元へ来て欲しい。」
「はい。これからもずっと先輩を支えていきます。」
満面の笑みを浮かべる私に千葉先輩は微笑む。
そして私の左手をそっと取り、指輪をはめてくれた。
「これは誕生日プレゼントだ。」
「覚えててくれたんですか?」
「当たり前だ。大切な人の誕生日を忘れるはずないだろう。」
千葉先輩にギュッと抱きしめられる。
夢が叶い、共に歩いて行くと誓い、新たな夢に向かって歩き出すこの日のことを私は一生忘れないだろう。
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