そのままの君が好き PAGE.2
千葉先輩に連れてこられたのは町外れにある高台の公園。
視界が広がる場所にベンチがありそこへ向かう。
「着物が汚れると困るからな。」
そう言って、千葉先輩は袂からハンカチを取り出してベンチに敷いた。
千葉先輩のちょっとした心遣いに嬉しくなる。
並んで座ると先輩は話し出した。
「ここには毎年、初詣の後に来ている。一年の目標をたてたり、運試しをしたり…」
「運試しですか?」
「あぁ、今年はいい年になりそうだ。」
千葉先輩の言っている意味が全くわからず、不思議そうに先輩を見つめていると…
「鍵谷さん、よく見るとわかる。」
千葉先輩が指を差す方を見る。
「えっ?!もしかして、あれって!」
「そう。富士山だ。」
白い雪を被った富士山が見えた。
「すごいですね。こんなところからでも見えるんだ…」
「見えるといい年になりそうな気がする。そう思わないか?」
「そうですね。やっぱり、日本一だから…選手権優勝しますよ!」
私がそう言うと千葉先輩は目を細めて微笑んだ。
「鍵谷さんがそう言うと本当になるような気がする。君の言葉は俺に力を与えてくれる。」
私は今日、ずっと思っていたことを聞いてみた。
「千葉先輩、今日はたくさん、誉めてくれますよね。何だか、変な感じがします。」
「…俺は君みたいに素直に言葉にするのは苦手だ。言葉にしないことで不安にさせてしまうこともあるだろう。だから俺の想いをできる限り、君に伝えていこうと思う。これは今年の抱負だ。」
私は首を横に振る。
「言葉なんかなくたって、私には先輩の気持ち伝わってますよ。いつも優しく見守ってくれてて…不安になんかなりません。」
千葉先輩は私の頬にそっと触れる。
「じゃあ、俺が今、考えていることがわかるか?」
私の瞳をジッと見つめる千葉先輩に、恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
「えっと…その……キ…ス…ですか?」
「正解だ。」
千葉先輩は私にそっとキスをする。
「俺の気持ちが伝わって嬉しい。」
「だから、先輩は変わらずそのままでいてください。そして…私を見守って…」
「君もそのままでいて欲しい。俺に力を与えてくれ…」 私が頷くともう一度キスをする。
千葉先輩の想いがたくさん詰まった、熱く激しいキスはしっかりと私に伝わった。
ずっとこのまま、そしていつまでもそのままで…
前へ しおりを挟む
|
![](//static.nanos.jp/upload/k/kazukichiba/mtr/0/0/20100611112549.jpg) |