あなたという奇跡の存在 PAGE.12
二人になると樹々は話し出した。
「ねぇ、千葉くん。今日はありがとう。私、とても嬉しかった。」
俺は涙が止まらない。
樹々は俺の頭をなでてくれた。
「君が倒れたのを見た時から、俺はずっと後悔していた。俺のために無理をさせたって…」
樹々は首を横に振る。
「君がこんなに辛い目に合うなら、サッカーを…辞めてもいいと思った。」
「そんなのダメ!」
俺は樹々の唇にそっと指を当てた。
「今は思っていない。お母さんから話を聞いて、俺はサッカーを続けて行こうと思ったから。」
ホッとした樹々にこう言った。
「でもその覚悟はずっと持ち続ける。君とサッカーを秤にかけなくてはいけない日が来るならば…俺は君を選ぶ。」
俺は大きく深呼吸をする。
「樹々、結婚しよう。」
驚いて目を丸くする樹々に付け加えた。
「もちろん、今すぐには無理だ。俺がプロに入って、活躍するようになり、君が無理をしなくてもいつも笑顔でいてくれるようになってからだ。でもそんなに遠い未来ではないと確信している。」
樹々の瞳が曇る。
「…俺ではダメか?」
樹々は首を横に振る。
「私は千葉くんじゃないとダメなの。でも…」
「でも?」
「…千葉くん、モテるから、私なんかより、元気でかわいい女の子の方がいいんじゃないかな…って。だって、告白されたんでしょ?」
俺はため息をついた。
「樹々…俺にとっての一番は君で、二番はサッカーだ。それ以下は何もない。誰が何を言おうと俺には君だけだ。」
樹々はポロポロと涙を流す。
俺はその涙を拭いながら、尋ねた。
「樹々、プロポーズの返事は?」
泣きながら、満面の笑みで答えた。
「はい!ずっと離さないで!」
俺は樹々を強く抱きしめ、激しく唇を重ねる。
「約束する。一生、離さない…」
4年後、桜の舞い散る中、俺達は祝福され、結婚式を挙げた。
約束通り、俺はプロで活躍し、樹々はいつも笑顔でいっぱいだ。
永遠の愛を誓い合ったその場所は…
国立競技場だった。
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