あなたという奇跡の存在 PAGE.11
コンコンッ。
「はい。」
ドアを開けると、樹々のご両親が立っていた。
「あなたが千葉くんね?ごめんなさいね。樹々のことで心配かけちゃって。」
俺が予想していたよりも遥かに明るい声でお母さんが話しかけた。
「すみませんでした。僕が応援に来て欲しいと言わなければ、こんなことには…」
深々と頭を下げた。
「千葉くん、頭を上げてちょうだい。私達、ちっとも怒ってないのよ。むしろ、千葉くんには感謝をしているぐらいだから。」
俺はお母さんの言っている意味がわからずに不思議そうな顔をした。
「千葉くんも知ってる通り、この子は体が弱いでしょ?でもね、あなたと知り合う前に比べれば随分強くなってきてるの。今日は天候も悪かったし、ちょっと体に障っただけだから。」
「でも…」
お母さんは俺の言葉を遮る。
「この子ね、体を理由に少し、感情を表に出さないと言うか、自分のやりたいと思うことをあきらめてしまうことがほとんどだった。でもあなたのためにいろいろとやりたいことが増えていって気がつけば普通の女の子達と変わらないぐらいにまでなったの。だからあなたにはとても感謝をしているの。」
お母さんは一旦、言葉を切り、繋げた。
「これは親としての勝手なお願いなんだけど、千葉くんがこの子のことを嫌いになるまで一緒にいてあげてもらえないかしら?サッカーをしているあなたといる樹々は幸せな笑顔を見せてくれるの。私達もその顔がずっと見たくて…」
俺の頬には一筋の涙が流れていた。
「千葉くん?」
その声にハッとした。
「樹々!」
樹々の傍に行き、顔を見つめる。
「千葉くん、優勝おめでとう。」
PKの時に見た満面の笑みだ…
「お父さん、お母さん。私、千葉くんと二人で話がしたいな。」
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