あなたという奇跡の存在 PAGE.8
翌日、選手権が開幕した。
私は、テレビで開会式を見た。
テレビで見るだけでも国立競技場の広さには圧倒される。
実際はものすごいだろう。
今からワクワクしていた。
入場行進が始まり、テレビの画面には陵泉高校が映し出されていた。
(うわぁ…!千葉くんだぁ!)
よく見ると、千葉くんの首筋にはグリーンのひもが。
(お守り、着けてくれてる…がんばって…)
陵泉サッカー部は難なく勝ち進み、ベスト4に残った。
千葉くんの夢の一つである国立での試合が実現した。
でも夢の一つに過ぎない。
さらなる夢は選手権優勝なのだから。
そして準決勝も辛勝を果たす。
いよいよ、明日は決勝戦。
また夢に近づいた。
夜になり、明日の準備を終えた私に電話がかかってくる。
千葉くんからだった。
慌てて電話に出た。
「もしもし、千葉くん?」
「樹々、俺だ。明日の決勝だが、家で応援してくれないか?」
「えっ?どうして?!」
「天気がよくない。雪も降るかもしれない。樹々が心配だ。」
「千葉くん、私のことなら心配しないで?あたたかい格好していくから。私のことより、試合に集中して?それに私も千葉くんからいっぱい元気もらってるから少しずつだけど体も強くなってきてるんだよ。」
電話の向こうで大きなため息が聞こえた。
「わかった。そこまで言うなら、応援頼む。ただし、無茶はするな。少しでもおかしいと思ったらスタンドにいるスタッフに言って医務室に行くんだぞ。それと絶対に携帯だけは使える状態にしてくれ。いいな?」
「うん。わかった。ありがとう。千葉くん。明日、楽しみにしてるよ。」
「あぁ、必ず優勝旗を樹々に見せる。じゃまた明日…」
電話を切った後、幸せな空気に包まれていた。
こんな時にですら、私のことを気にかけてくれる。
もう私は千葉くんがいない人生なんて考えられなくなっていた。
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