あなたという奇跡の存在 PAGE.7
年が明けて、元日。
今日は千葉くんと初詣に行く約束をしている。
でも明日から選手権が始まるのでゆっくりは過ごせない。
早速、神社へ向かった。
ここは有名な神社なので参拝客の数もすごい。
はぐれないようにと千葉くんはずっと手を握ってくれた。
「樹々、答えがわかった。」
「えっ?何の?」
千葉くんは首に巻いているマフラーを触る。
「気持ちが通じ合いすぎて、怖いぐらいだ。」
私が編んだマフラーには同系色の糸でクローバーの刺繍を入れていた。
つまり、お互いに緑色のクローバーの物を贈り合っていたのだ。
「どうしてもクローバーの刺繍が入れたかったの。でも千葉くんは男の子だから、目立っちゃ恥ずかしいかなと思って…」
「ありがとう。そういう樹々の気遣いも嬉しいよ。」
「…それにしても奇跡だよね。私、このプレゼントだけじゃなく、千葉くんに関する全てのことが奇跡だなと思ってる。だから神様に感謝してるの。」
「そうかもしれない。お願い事の前に神様にお礼を言わないといけないな。」
そして私達が参拝する番になった。
私はお賽銭を投げた後、カバンから取り出した物を手の平に包みギュッと握りしめた。
(神様、本当にありがとうございます。神様にお願いがあります。千葉くんが選手権で優勝できますように…)
帰り道、私は千葉くんに尋ねた。
「選手権、応援に行ってもいい?」
千葉くんは厳しい顔をした。
「樹々の体調を考えると、家で…と言いたいが、今回ばかりは俺からお願いする。必ず優勝するから、決勝戦だけ来てくれないか?一度だけでいい、俺に笑顔で声援を送って欲しい。君の力を与えて欲しいんだ。」
頷く私に千葉くんは言葉を続ける。
「どんなに遠くても樹々の声だけは聞こえるから…」
別れ際に千葉くんの瞳をジッと見つめた。
「千葉くん、両手出して?」
出された手のひらにサッカーボール形のお守りをそっと置いた。
「さっきお参りした時にこれに願掛けしたの。もちろん、優勝できますようにって。首にかけるひもは私達のラッキーカラーだよ。私はいつでも千葉くんの傍にいるからね。」 千葉くんはお守りをギュッと握りしめた。
「ありがとう。樹々。」
強く抱きしめられ、何度も何度も唇を重ねる。
「君を離さない…」
やがて名残惜しそうに唇が離され、千葉くんは言った。
「樹々、行ってくる。」
私はとびっきりの笑顔で応えた。
「千葉くん、行ってらっしゃい!」
私は千葉くんが見えなくなるまでその大きな背中をずっとずっと眺めていた。
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