あなたという奇跡の存在 PAGE.4
その年のインターハイの決勝戦。
私は初めて千葉くんの応援に出かけた。
本当はもっと早くから応援に行きたかったけど、炎天下での試合で私の体調を気遣ってくれた千葉くんから決勝戦だけと念を押されていた。
初めて見る競技場や人の多さに少し圧倒される。
試合が始まるとそれはさらに高まった。
ものすごい声援だ。
「キャー!神坂くーん!」
「千葉くーん!がんばって!」
びっくりした。
千葉くん、人気あるんだ…
何だか、私の知らない千葉くんを見てしまったようで少し悲しくなった。
でも振り切るように私も千葉くんに声援を送る。
「千葉くーん!がんばってー!!」
届くはずがないであろう私の声に反応するかのように千葉くんがわずかに振り向く。
(まさか…ね。)
試合は陵泉が勝ってインターハイ優勝を飾った。
なんだろう?
胸の中が熱くなり、悲しくもないのに涙が出る。
スポーツに縁がなかった私にとって、見ているだけでこんなに感動できるってことを初めて知った。
千葉くんがいなければ、一生味わうことがなかっただろう。
「千葉くん、おめでとう。そしてありがとう…」
泣きながら小さく呟いた。
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