Kazuki Chiba

あなたという奇跡の存在 PAGE.1


私は他の人よりも少し体が弱い。

運動はお医者さんから止められている。

みんなみたいに走り回ったりしたいと思うこともあったが今はそれすらもあきらめている。

そんな私の唯一の趣味が読書だ。

今日も図書館でいつものように本を探していた。

(あっ、新しいのがある!)

上の方だったので、踏み台に上り、本を取ろうと背伸びをする。

見上げた途端、軽いめまいがした。

私はそのまま後ろに倒れた。

「大丈夫か?」

倒れる寸前に男の人が私を支えてくれていた。

私が返事できないでいると、その人は私をお姫様だっこをして、図書館の休憩所に運んでくれた。

少し落ち着きを取り戻した私は、お礼を言った。

「大したことなければ、それでいい。じゃ、俺はこれで…」

そう言って立ち去ろうとしたその人に私は、慌てて尋ねた。

「あっ、あの!図書館にはよく来られるんですか?」

「普段は部活があるから来ないが、日曜はよく来る。」



私は次の日曜日、あの人を待っていた。

(そう毎週は来ないかな?)

そう思った時、やって来た。

「あっ、あの…」

「あぁ、君はこの間の…体調はいいのか?」

「はい。ありがとうございました。少し、時間いいですか?お礼がしたくて…」

「時間はいいが、お礼は別に…」

「お礼って言っても、自販機の飲み物ですけどね。」

クスッと笑う私につられたのか、彼も笑った。

「じゃ、遠慮なくごちそうになろう。」

彼はコーヒーがいいと言ったので買って手渡す。

私はミルクティーを買い、一緒に座る。

「あの…そういえば部活やってるって。何部なんですか?」

「サッカー部だ。」

「えーっ?!」

「そんなに意外か?」

「いえ、あの、えっと…」

あたふたする私に、少し微笑む彼。

「よく言われる。気にするな。てっきり文化系だと思ったんだろう?」

コクコクと頷く私。

「まぁ、サッカーが一番だが、基本は静かな方が好きだ。本を読んでいると落ち着く。」

「だから、図書館によく来られるんですね。」

「そうだな。それに俺は一応受験生だし。」

「大学受験?」

「…そんなに老けて見えるのか?俺は中3だ。」

「えーっ?!ずっと高校生だと思ってたんで…それで受験って言うから、てっきり…」

さっきよりさらにあたふたする。

「ところで君は何年だ?」

「…同じ年です。」

「…俺は君のこと、年下だと思っていた。」

なぜか二人とも笑ってしまった。

「まさか、同じ年だとは。自己紹介がまだだったな。俺は東中の千葉一樹。」

「私は、桃花女子学院の鍵谷樹々。じゃあ、敬語はいいよね?千葉くん?」

「あぁ、もちろん。」

その後もいろいろと話をして、日曜日には図書館で会う約束を交わした。



前へ 次へ しおりを挟む


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -