Kazuki Chiba

LOVE DETERMINATION
第2章
充実の平行線(side Ryosen) PAGE.4


選手権開幕。

インターハイの勢いも手伝い、陵泉も西園寺も予選を難なく突破し本選も順調に勝ち進む。

陵泉はこの試合を勝てば国立だ。

相手は雅弥率いる西園寺…

ここまで0―0の同点。

後半残り5分。

スルーパスを受けた雅弥が攻めて来る。

俺は雅弥を迎え撃つ。

粘ったが雅弥は俺のサイドを抜けていきゴールを決めた。

そしてそのまま、試合終了。

国立を目の前に俺の夢は消えた。

俺の目の前で雅弥は夢を叶えた。

そして俺は痛感した。

プロでは通用しないと…



学校へ戻り、最後に部室を出た。

誰一人いない道を歩き、校門まで行くと見覚えのある人影に俺は足を止めた。

「樹々さん…どうしてここに?」

「雅弥くんから伝言があるの…」

「伝言?」

「一樹さんの夢を奪ってしまった。勝負事とは言え、やりきれないって…」

「樹々さん。少し時間いいか?」

頷く彼女を確認して俺は無言で歩き始めた。



着いた場所はいつもの河原。

「樹々さん…雅弥には感謝している。ここで雅弥と出会い、二人で夢を語り合いながらがんばってきた。ここまでこれたのは雅弥のおかげだ。俺は礼を言いたい。戻って雅弥にそう伝えてくれないか?」

彼女は頷いた。

「でも今は一樹さんのそばにいたいの。少しでも力になりたい…私、一樹さんが好き…」

俺は彼女の口にそっと手を当てた。

「それ以上は言わないでくれ。」

彼女は目に涙をためていた。

「一樹さんは、私のこと、嫌いなの?」

「もちろん、嫌いではない。でも俺は君の気持ちに応えられない。」

「どうして?」

「西園寺家の令嬢と付き合うにはそれなりの地位が必要だ。俺にはその資格がない。」

「一樹さん…もしも私が西園寺じゃなかったら?」

「もしも…何てことはあり得ない。」

「お願い!一樹さんの気持ちを聞かせて?でないと私…」

彼女はその場に崩れ落ちた。

「………俺は君のことが好きだ。」

言葉に出した途端、俺の心の中が変わった。

今まであきらめていた気持ちを押さえ込み、彼女が欲しい、手に入れたいと。

俺は泣き崩れる彼女を抱き締める。

「樹々。俺は君にふさわしい人間になる。そのためには時間が必要だ。それまで待っててくれないか?」

「………本当に?待っててもいいの?」

「あぁ、待っててくれ。寂しい思いをさせることになるが、必ず迎えに行く。」

樹々にキスをした。

俺の心の中と同じぐらいに熱く、激しく…



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