SQUAREな関係 PAGE.4
夏を迎え、私達の季節がやって来た。
陵泉高校は屋内プールなので年中練習できるが、やはり試合は夏がメインだ。
インターハイでのこと。
男子決勝を控え、同じ種目に出場する瞬と勝利を応援するために二人のもとに駆け寄る。
「瞬、勝利。がんばって!」
「あぁ…」
瞬は勝利が一緒にいるからいつも通りそっけない。
「樹々が応援してくれるから、今日は瞬に勝てそうだ。」
明るく答える勝利。
とここまでは今までにも経験している、いつも通りの3人の会話。
この後、勝利がとんでもないことを言い出す。
「なぁ、瞬。」
「何だ?」
「この決勝で勝負しないか?」
(…勝負?)
私と瞬は顔を見合わせた。
「樹々を賭けた勝負だ。」
「何、言ってんの?勝利?」
私が尋ねる。
「俺さ、前から樹々のこと、好きだったんだよね。今までは俺の入る隙がなくてあきらめてたけど、最近のお前らを見てると、俺にもチャンスあるかなと思って。どうだ?瞬?」
「お前には渡さない。」
瞬はキッと勝利を睨みつけた。
「ちょっ…ちょっと!二人とも、私の気持ちは?」
そんな私に構いもせずに二人はスタスタと歩いて行ってしまった。
(もう…二人とも何、考えているんだか…)
観覧席に戻った私は、大きくため息をついた。
「何?どうしたの?樹々ちゃん。」
(…忘れてた。ここにも私に告白してくれた人がいた。)
「…………」
「何だか、今日の瞬と勝利はいつも以上にピリピリしてるね?」
「あの二人、私を賭けて勝負するんですって。」
他人事のように言う私。
「えー?俺も泳ぎたい!」
「…コーチは大学生でしょ?試合でれませんよ?」と呆れて答えた。
「いや、そんなことはわかってる。俺も樹々ちゃんの賭けに参加したかったな。」
「………」
「ところで樹々ちゃんはどっちに勝って欲しいの?」
「どっちでも…二人とも私の気持ちは考えてくれないのかな?」
呆れは怒りに変わっていた。
「まぁまぁ、樹々ちゃん。男には好きな女を賭けた戦いってのに憧れるもんなんだよ。」
「…そんなもんですかね?」
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