エサをあげると強くなる? PAGE.5
「佐伯くん、ごめんね。待たせちゃって。」
その時、私の後ろから私を呼ぶ声がする。
振り向かなくたって誰だかわかる。
私は佐伯くんに微笑んだ。
「佐伯くん、紹介するね。私の彼氏。そして、向こうにいるのが新しい彼女。」
佐伯くんの表情が険しくなり、彼に殴りかかろうとした。
私は佐伯くんに笑顔で言った。
「佐伯くん、もういいの。私、ちっとも怒ってないから。」
「でもこいつ、樹々ちゃんに嘘ついて…」
私は静かに首を横に振る。
「…就職してからすれ違うようになって、いつかはこうなるんじゃないかって思ってた。それを乗りきれるだけの気持ちがお互いになかったんだと思う。私も寂しかったけど、彼もそうだったんだと思うよ。」
「ごめん。樹々。俺、お前のこと好きだけど、いつもそばにいてくれる彼女に惹かれて…」
「ううん。私こそ、ごめんね。一緒に過ごした時間、楽しかった。ありがとう。」
「俺の方こそ楽しかった。ありがとう。じゃ、元気でな。」
私は彼を笑顔で見送った。
前へ 次へ しおりを挟む
|
|