エサをあげると強くなる? PAGE.4
次の日曜日。
久しぶりに彼とデート。
彼とは専門学校で知り合って付き合いだしたものの、就職してお互い忙しくてなかなか会う時間がなかった。
待ち合わせ場所に着いたところで携帯を見ると彼からメールが来てた。
「……………」
急に仕事が入ったとの内容だった。
(仕事じゃ仕方ないよね…)
ふぅと上を見上げて大きくため息をついた瞬間、目の前が暗くなる。
「樹々ちゃん。」
「???」
目の前に佐伯くんが立っていた。
「さ、佐伯くん!?」
「どうしたの?ため息なんかついちゃって。」
「…何でもない。」
「何でもないの顔じゃないでしょ。言わないと…」
佐伯くんが顔を近づけてくる。
「ま、待って!話すから!」
佐伯くんの胸を両手で押さえ、彼が仕事でデートに来れなくなったことを話した。
「樹々ちゃん、行こう。」
佐伯くんは私の手をギュッと握り、歩き出した。
「佐伯くん!どこへ行くの!?」
佐伯くんは笑うだけで答えない。
電車を乗り継ぎ、着いた先は遊園地だった。
「樹々ちゃん、こんな時は、パァーッと遊ぶに限るよ。」
最初は戸惑ったけど、佐伯くんが私を元気づけようとしてくれるのが嬉しくなり、楽しめるようになってきた。
乗り物にたくさん乗って疲れた私達はベンチに座って休憩していた。
「樹々ちゃん、少しは元気出たかな?」
「うん。佐伯くん、ありがとう。」
ふと、前を見ると、私はスッと立ち上がり、佐伯くんに声をかけた。
「佐伯くん、知り合いを見かけたから、ちょっとここで待っててね。すぐ戻ってくるから。」
「うん。待ってるよ。」
私は知り合いの方へ歩いて行き、声をかけた。
「こんにちは。今日は彼女とデートですか?」
青ざめた表情で私を見つめる彼の横には、恥ずかしそうに、でも喜んでいる彼女がいた。
「見かけたから、挨拶だけでもと思って。邪魔はしませんから、楽しんでくださいね。…さよなら。」
二人に背を向け、私は佐伯くんの元へと戻った。
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