Fumiya Saeki

エサをあげると強くなる? PAGE.1


「う〜ん!久しぶりだな。」

私はこの春、専門学校を卒業して就職した。

勤務先が私の母校である陵泉高校の近くにある。

仕事にも慣れて少し余裕もできたので、久しぶりに学校を訪ねた。

(覗いて行こうかな?)

私は体育館の扉をそっと開ける。

(わぁ…!やってる!)

嬉しくなって一人ではしゃいでいると後ろから声をかけられた。

「入りたいんだけど、ちょっといいかな?」

急に声をかけられ、驚いて振り向くと…

「あっ!佐藤先輩!」

「…鍵谷か?驚いたな。大人っぽくなってすぐにはわからなかったよ。」

「先輩はどうしてここに?」

「俺は今、講師でバスケ部の監督だ。練習見ていけよ。」

「はい。お邪魔します。」

練習している部員を見渡すと見知った顔はいない。

(まぁ…あんな状態だったもんね。仕方ないか。)

しばらくすると佐藤先輩が休憩の声をかける。

タオルやドリンクを取りに来た部員達が私のことに気付く。

「監督、彼女ですか?」

佐藤先輩が笑って答える。

「だといいんだがな。彼女は俺の2つ下でお前らの先輩だ。マネージャーをやってた。」

「鍵谷です。2年前に卒業しました。3年生とは一緒にやってたんだけど…」

部員達はバツの悪そうな顔をする。

「あの状態じゃ、みんな辞めてるよね。」

「鍵谷、あの状態って?」

先輩が私に尋ねる。

「先輩が卒業されてから段々練習しなくなっていって…私が卒業する頃にはほとんど活動してなかったんです。だから今日、覗くのも不安だったんですけど…安心しました。みんながんばってくれてるから。」

私は部員達に微笑んだ。

佐藤先輩はニッコリ笑って部員達に言った。

「俺もお前らには期待している。さぁ、休憩終了だ。」

練習に戻る部員達。

私は先輩に声をかけた。

「先輩、私、帰ります。また遊びに来てもいいですか?今度は差し入れ持って来ますよ。」

「あぁ、いつでも来いよ。待ってるぞ。」

私はバスケ部が立ち直ったという嬉しさを胸に体育館を後にした。



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