そしてキラキラ。 PAGE.2
『ガラガラッ!!』
勢いよく美術室のドアが開けられた。
そこには息を切らした男子生徒の姿。
「ハァ…ハァハァ…すみません!ケガは…なかったですか?」
彼だった…
「ケガ?」
私は、緊張する気持ちを抑えるように冷静になって部屋を見渡した。
窓ガラスは粉々に砕け、キラキラと共にボールが転がっていた。
「大丈夫ですよ。」
私は、ボールを拾い、彼に差し出した。
すると私の指先から赤い血が流れてきた。
彼は私の手首を掴み、手洗い場へ走る。
そして水道の水で、血を洗い流した。
二人とも無言のまま…
「もう…大丈夫です。」
彼の手が離れた。
「本当にすみません。俺の打った球でガラス割っちゃって…ケガまでさせて…」
私は首を横に振る。
「俺、ガラス片付けときますから、保健室で手当てしてもらってください。」
私はその言葉にも首を横に振る。
「大丈夫ですよ。それより戻ってください。練習中なんですよね?片付けは私がやりますから。」
今度は彼が首を横に振る。
「監督には断ってきたから。割ったのは俺の責任だし…」
私は微笑んで彼に言った。
「じゃあ、一緒に片付けましょう。その方が早く終わりますね。」
彼にほうきとちりとりを渡し、カバンに入っているばんそうこうを出そうと彼に背を向けて、私はハッとした。
彼の絵を片付けてなかった。
もしかしてと思い、後ろを振り返ると、彼がジッと絵を見ていた。
「…もしかして、これ俺?」
「すみません!私、あの…」
私は頭を下げてあやまった。
「いや、その…俺、怒ってるわけじゃなくて、何て言うか、ちょっとびっくりして…」
「あの…本当に怒ってません?」
頭を少し上げて彼を伺う。
「本当に怒ってない。恥ずかしいけど、嬉しい…」
彼を見ると照れているのか顔が赤くなっていた。
「…俺、野球部1年の日向一平。」
「私は、美術部1年の鍵谷樹々。同じ学年だね。敬語使って損しちゃった。」
ペロッと舌を出して、笑って言うと日向くんも微笑み返してくれた。
「それ、完成なのか?」
「もうちょっと、かな?完成したら日向くんにプレゼントしてもいい?」
「恥ずかしいけど…鍵谷が一生懸命描いてくれたから、受けとるよ。」
数日後、日向くんに完成した絵をプレゼントしたら、お礼をもらった。
「好きだ。」という言葉と甘いキス。
そのお礼は、淡く、優しく、そしてキラキラしていた。
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