Yusei Kondo

TEN YEARS LOVE PAGE.3


夏の甲子園予選が始まった。

順調に勝ち進み、今日は準決勝。

1点リードして9回裏の守りにつく。ここを抑えれば決勝進出だ。

(ユウちゃん、がんばって…)

祈るしかできない。

2アウトを取ったところでユウちゃんが右腕を押さえながらタイムを取る。

ダイちゃんが急いでマウンドへ駆けつける。

ユウちゃんは辛そうな顔をしていた。

監督もマウンドへ向かう。

内野陣も集まり、話し合っていた。

「近藤くん、大丈夫だといいんだけど…」

さーちゃんが呟く。

「………」

私は、何も言えなかった。

ユウちゃんと監督がマウンドを降りてくる。

「鍵谷、近藤の右手首を冷やしてテーピングしてくれ。」

私は、急いでユウちゃんに処置を施す。

「ユウ…近藤先輩、痛いですか?」

「あぁ。少し…」

私は、テーピングしたユウちゃんの手首を撫でる。

小さい頃からの習慣でケガをして処置をした後は必ず撫でる。

撫でる時に、良くなるようにと祈っているのだ。

「はい、できました。」

「サンキュ。樹々」

私の頭をクシャっと撫でる。

これも習慣だ。

そして、マウンドへと戻った。

試合再開。

ユウちゃんが投げた。

(ユウちゃん…!)

カキンッ!

ダイちゃんがマスクを外し、球を追いかける。

ボールはダイちゃんのミットの中。

(勝った…!)

みんな喜んでいる。

でもユウちゃんとダイちゃんだけは笑ってなかった。

そのまま、私達4人は病院へと直行した。

検査の結果、手首の筋を痛めていることがわかった。

翌日に試合を控えてることを伝えると、ドクターストップがかかった。

ユウちゃんは先生に食い下がったが認められなかった。

診察を終えるとユウちゃんは監督に電話を入れ、症状を説明した。

家へ帰る私達の足取りは重く、誰もしゃべらなかった。

別れ際にダイちゃんはユウちゃんに声をかける。

「ユウ、気を落とすなよ。明日は俺達がお前の分まで頑張る。お前はしっかり治せ。」

「サンキュ。大地。」

ダイちゃん達と別れて、二人で歩く。

「ユウちゃん…」

「………」

私は、ユウちゃんの右手首をそっと掴んで撫でた。

「ユウちゃん…ごめんね…おまじない効かなかったね…」

「樹々のおまじないが効いたから、この程度で済んだんだ。ありがとう…大丈夫だよ。」

私の頭を優しく撫でてくれた。

「明日、投げられないのは悔しいけど、大地達に任せて、俺は応援に徹するよ。」

「ユウちゃん…」

「だから樹々も元気だせよ?」

「…うん!」

そう言って私は、精一杯微笑んでみせた。



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