Yusei Kondo

春風に乱れて PAGE.2


野球部におからクッキーを差し入れすることになった私は日曜日に材料を揃えようと買い物に出かけた。

人数が多いので、量もハンパではない。

(これで終わりだな。近藤先輩んちは日曜日お休みだし…それにしても重い…)

少し休憩していたら、近藤先輩が女の子と一緒に前から歩いて来るのが見えた。

(えっ?ウソ!)

隠れる所もないので、うつむいて通り過ぎるのを待つ。

「あれ?鍵谷じゃないか。どうした?こんなとこで。」

私の思いも虚しく、頭上から声がする。

精一杯笑顔を作り、顔を上げる。

「こんにちは。近藤先輩!」

「大丈夫か?しんどそうだな?」

「いえ、ちょっと荷物が重くて、少し休憩していたんです。」

「荷物?」

近藤先輩は私の足元を見る。

「随分と買い込んだなぁ。何の荷物だ?」

「約束してた差し入れの材料です…」

近藤先輩が私に満面の笑みを浮かべ、そして一緒にいた女の子に声をかける。

「沙織、今日は大地だけで大丈夫だろ?俺、この子と行くから。」

沙織と呼ばれたその女の子は、ニッコリ頷いて手を振り、歩いて行った。

「先輩…彼女の方はよかったんですか?」

「彼女?あぁ、沙織のことか。今日は野球部の買い出しに来たんだ。もう一人いるから大丈夫だよ。」

そう言われても私の心はチクチクしたままだ。

「まだ買い物はあるのか?」

「あっ、いえ。今日はこれで終わりです。後は先輩のところのおからだけです。明日、行きます。」

「じゃあさ、明日、一緒に帰らないか?おからはお袋に頼んで取っておいてもらうからさ。」

「ええー!そんなぁ。私、買いに行きますよ。」

「俺が頼んで作ってもらうんだからさ。おからぐらいいくらでも提供するよ。なっ?」

「じゃあ…お言葉に甘えます。」

「よし!じゃ、帰ろうか?」

「はい!」

私の家まで送ってくれた近藤先輩。

いろいろと野球の話を楽しそうにしてくれた。

私も楽しく聞いていたが、心の中のトゲが刺さったままだった。



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