Yusei Kondo

春風に乱れて PAGE.1


私はおいしいものが大好きな、どこにでもいる女子高生。

食べるだけじゃ物足りなくて、自分でも作り、学校では料理クラブにも入っている。

ある日の昼休み。

友達の栄子ちゃんと話をしていた時のこと。

「ねぇ、樹々ちゃん。野球部の近藤先輩んちが豆腐屋さんって知ってた?」

「ううん。知らなかった。」

「うちのお母さんが買ってきたから食べたんだけど、すごくおいしかったの〜!」

「へぇ〜。そうなんだぁ。私も食べてみたいな〜。」



その日の帰り、早速、近藤先輩んちの豆腐屋さんに寄って、いろいろと買ってみた。



次の日、私はかなり早起きしてお弁当を作った。

学食で栄子ちゃんを前にお弁当箱を開ける。

「栄子ちゃん、今日は豆腐が大量だよ〜!」

豆腐ハンバーグ、厚揚げの煮物、しめじと薄揚げの炊き込みごはん。

そしておやつには、おからクッキー。

「もしかして、樹々ちゃん。近藤先輩んちのお豆腐?」

「そうなの〜!早速、買いに行っちゃった。」

「お買い上げありがとうございます!」

(えっ?!)

後ろを見ると、笑顔の近藤先輩…

私は恥ずかしくなり、顔が真っ赤になる。

「それ、君が作ったの?」

私は小さく頷く。

「俺にも少しわけてくれない?」

「こんなのでよかったらどうぞ…」

近藤先輩にお弁当を差し出す。

「いただきまーす。」

いろんなものを少しずつ、食べる近藤先輩。

一口食べる度においしいって言ってくれて…

私はそんな先輩をぼーっと見つめていた。

「ごちそうさまー!おいしかった!…あっ!全部食っちゃった!」

私は何だかおかしくなってしまい、笑い出した。

「オイオイ、そんなに笑わなくても…」

「す、すみません。先輩。でもおかしくって…」

「俺はうまいもんには目がないんだよ。だから、つい…」

「先輩んちのお豆腐は絶品ですからね。」

「そう言ってもらえると嬉しいな。親父も喜ぶよ。…それより、君の弁当なくなったな。俺、学食買ってくるよ。何がいい?」

立ち上がろうとする近藤先輩を制した。

「先輩、私、これがあるから大丈夫ですよ。」

そう言ってクッキーを取り出した。

「クッキー?そんなんで腹いっぱいになるのか?」

「おからクッキーなんで、意外と満腹感を味わえますよ。」

黙ってしまった近藤先輩。

「先輩?」

「………食ってみたい。」

「ふふっ。いいですよ。どうぞ。」

袋の口を開け、先輩に差し出す。

「…一つ取ってくれないか?俺が取ると、なくなると思うから…」

私は一つ取り出し、近藤先輩に渡す。

少し指が触れて、ドキドキする。

先輩は受け取ると、クッキーを食べる。

「なぁ…今度、このクッキー、俺にくれないか?」

「えっ?」

「ものすごくうまいから、もっと食べたい…」

「いいですよ。今度、野球部に差し入れに行きます。」

「そうか?楽しみにしてるよ。あっ、名前聞いてなかったな。」

「鍵谷です。鍵谷樹々。」

「鍵谷さん、今日はありがとな。おいしかったよ。じゃ、またな!」

春の嵐のように近藤先輩は私の心の中を駆け抜けて行った。



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