Yusei Kondo

TEN YEARS LOVE PAGE.8


日向くんと話をした数日後、私は、野球部のグラウンドに戻った。

長い間休んでいたので体力が極端に落ちていた。

さーちゃんに協力してもらいながら、体に負担がかからないように仕事をこなした。

以前のようにユウちゃんに話しかけることはしなかった。

もちろん、まだ辛いからだ。

でもユウちゃんに甲子園のマウンドに立ってもらいたいって気持ちだけは持ち続けた。



甲子園予選の決勝戦。

…ユウちゃんは投げきった。

そして、陵泉野球部は甲子園出場を果たした。

一つ夢が叶った…

さーちゃんと抱き合って泣いた。

ベンチに戻ってきた選手達に「おめでとう。」と声をかける。

最後に戻ってきたユウちゃんにも笑顔で声をかけた。

「近藤先輩、おめでとうございます。一つ夢が叶いましたね。」

「ありがとう。樹々のおかげだよ。今日は大地達と4人で帰ろう。」

ユウちゃんに言われたが、るりちゃんのことが気になり、チラッとるりちゃんを見る。

「いえ、私は…」

「ん?あぁ。気にするな。俺は4人で帰りたいんだ。」

半ば強引に引っ張られて久しぶりに4人で帰る。

私は嬉しいながらもチクチクと胸が痛い。

途中でユウちゃんがみんなに言った。

「今日はあそこに寄って行こう。」



着いた場所は河原にあるグラウンド。

リトルリーグ時代の練習場所だ。

久しぶりに来たその場所はあの頃と何も変わらない。

変わってしまったのはユウちゃんと私の関係だけ…

少し寂しい気持ちになってしまう。

ユウちゃんが口を開く。

「ここで誓ったよな?必ず、甲子園に出るって。」

みんな頷く。

「そして、実現した。俺と大地を支え続けてくれた沙織と樹々のおかげだ。本当にありがとう。」

さーちゃんと私は涙ぐみながら首を横に振る。

「この場所でまた新しい誓いをしたい。
俺と大地は大学で野球をする。
今度は神宮で優勝することを沙織と樹々に誓うよ。
…だから二人とも大学でもマネージャーやってくれないか?」

さーちゃんはすぐに頷いたけど、私は頷くことも首を横に振ることもできなかった。

「…大地、沙織。俺は樹々を説得してくるから。」

そう言って私の手を引っ張っていった。



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