Special Project

Valentine's Day
ーone step of the beginningー
田中健太


(今日はやっぱり、早く部活に行きたい。)

そう思った私は、断って部室に向かっていた。

部室に行く途中、後ろから声をかけられた。

「樹々ちゃーん!」

元気な声ですぐわかる。

ニコニコしながら健太くんがやって来た。

「樹々ちゃんも今からっすか?だったら一緒に行きましょうよ。」

「うん。」

その時、冷たく強い風が吹いた。

「うー!!!寒いね、健太くん。」

健太くんの顔を見ると頬が赤くなっている。

私は健太くんの顔を覗き込んで尋ねた。

「どうしたの?」

「…あー、いや、何か、その…嬉しいっす…」

「えっ…?」

「マフラー…使ってくれてるんすね…」

私は首元の赤いマフラーを撫でながら答えた。

「うん…だって、健太くんにもらったものだから…大切に使いたいなと思って…ね。」

「いや…ホント嬉しいっす…」

「ふふっ、さぁ行こうよ。」

「そうっすね。」



部活の休憩時間に私はお兄ちゃんを更衣室へと呼び出し、再びみんなの所へ戻った。

お兄ちゃんが部員のみんなに声をかける。

「今日は樹々がチョコを作って来てくれたぞ。一応バレンタインということみたいだ。」

みんなからお礼の言葉をかけられて気付いた。

「お兄ちゃん、そう言えば健太くんは?」

「ん?あれ?いないみたいだな…」

「私、探してくるね。」

「あぁ、頼んだぞ。」

私は健太くんを探しに柔剣道場を後にした。

(どこにいるんだろう…)

しばらくウロウロすると健太くんを見つけることができた。

座り込んでボンヤリ遠くを見つめている健太くんに声をかける。

「健太くん、どうしたの?具合でも悪い?」

「樹々ちゃん…いや、大丈夫っす。」

「でも…元気ないね?」

「それは…その…樹々ちゃんが…」

そこまで言って健太くんは黙ってしまった。

「えっ?私、何かした?」

健太くんは真剣な眼差しで私を見る。

「樹々ちゃんは、主将のこと好きなんっすか?」

「えっ?お兄ちゃん?どうして…?」

「さっきチョコを渡すのを見たっす…」

「ぷっ!」

私は思わず吹き出してしまった。

「健太くん、勘違いだよー。あれは義理チョコだよ。お兄ちゃんには小さい頃からずっと渡してるもん。まさか、それで元気なかったの?」

ホッとした表情で頷く健太くん。

「健太くん、戻ろう。」

私は健太くんの手を取り、更衣室へ向かった。

「健太くん、ちょっと待っててね。」

私は自分のカバンの中から箱を取り出し、健太くんの所へ行く。

「はい、健太くん。」

「……」

「健太くん、開けてみて?」

健太くんはゆっくりと開けるとビックリしていた。

「樹々ちゃん…」

「これが私の気持ち。」



「これ…俺に?」

「うん。健太くんのことを想って作ったんだよ。休憩終わるから後で食べてね?」

「樹々ちゃん、ありがとうっす!」

いつも通りに戻った健太くんとみんなの所へ戻った私達にお兄ちゃんが声をかける。

「健太、遅かったな。もう樹々のチョコはなくなったぞ?」

「いいっすよ。俺、もっといいものもらいましたから。」

「いいものって何だ?」

「主将には教えられないっすよー!」

「何だとー!!!」

笑顔で答える健太くんにお兄ちゃんが技をかける。

「いててててて!痛いっすよ!」

(ふふっ…健太くんったら。)

健太くんにいつもの笑顔が戻り、一安心した私なのであった。


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