Special Project

Valentine's Day
ーone step of the beginningー
川瀬智輝


私は少し悩んだが困っているなら仕方がないと思い、代わってあげることにした。

「いいよ。用事があるんじゃ仕方がないもんね。」

「サンキュー。鍵谷、助かったよ。じゃ、よろしく!」

そう言って、彼は足早に教室を後にした。



(急がないと…遅れちゃう!)

掃除が長引いてしまい、ギリギリで部室に到着した。

(あーあ。渡せなかったな…仕方がない、帰りに渡そう。)

気持ちを切り替えて部活に集中することにした。



部活終了後、片付けを済ませ、部室に戻る。

「お疲れさまです。」

声をかけて中に入ると、そこには川瀬コーチだけが残っていた。

「お疲れさん。もう終わった?」

「はい。」

「じゃ、帰ろうか。」

「えっ?みんなもう帰ったんですか?」

「あぁ、今日はみんなヤケに早かったな。」

(と言うことは…)

「コーチ、すみません!待たせてしまって…」

「樹々ちゃんが気にすることはないよ。最後まで残るのは俺の仕事だからね。それに…」

一旦、言葉を切って私を見つめるコーチ。

「樹々ちゃんと二人きりになれるなんて滅多にないからね。まぁ、俺としては嬉しいんだけど。」

確かにいつもなら誰かは残っている。

今はコーチと二人きり…

思い切って私は自分のカバンからチョコを取り出し、コーチの前に立った。

「私、コーチのことが好きです。これ受け取ってもらえませんか?」

ドキドキして顔が上げられない。

「えっ?本当に?」

私は小さく頷く。

コーチは私をそっと抱きしめる。

「樹々ちゃん、ありがとう。俺、本当に嬉しい。君のことが大好きだよ。」

コーチの言葉に私も嬉しくなる。

「コーチ、今度私に泳ぎを教えてください。」

「あぁ、いいよ。でも俺は厳しいぞー。」

「お手柔らかにお願いします。」

「ははっ!樹々ちゃんにそう言われると甘くなっちゃうな。」

今度はギュッと強く抱きしめられ、私は心地よさにいつまでも酔いしれていたのだった。


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