Shuichi Saionji

WHITE FLOWERS PAGE.4


私が修一さんに教えるようになって、数ヶ月が経った。

突然、修一さんから電話がかかってきて、次のお稽古は西園寺家ではなく、違うところですると言われた。

当日。

いつもの時間よりも早く迎えに来たのは、御堂さんではなく、修一さんだった。

それも修一さんが運転している。

私が助手席に座ると、修一さんは優しく笑った。

「樹々さん、驚かせてしまいましたか?」

「はい。まさか、修一さんがお迎えに来てくれるなんて、全然思ってませんでしたから。」

「今日はとっておきの所へ案内しますよ。」



着いた場所は山あいにある和風の家。

家の周りには色とりどりの広い花畑がある。

「いかがですか?樹々さん。」

「とても素敵な所ですね。空気が澄んでて気持ちいい!」

「気に入ってもらえて、僕も嬉しいです。せっかくだから、散歩でもしませんか?」

「はい!」

しばらく歩くと森の中に入る。

「さぁ、ここからは道が急になっていて危ないですから…」

修一さんが手を差し出す。

「えーっ!だ、大丈夫ですから…!」

それでもニッコリ微笑んで手を差し出す修一さん。

「はい…」

おずおずと手を出すと、修一さんはギュッと握ってくれた。

しばらく山道を歩くと川の音が聞こえてきた。

「樹々さん、もう少しですからね。がんばってください。」

「はい、がんばります。」

体力には自信がある方だが、握られた手にドキドキしているためか、いつもより疲れやすくなっていた。

「さぁ、着きましたよ。」

そこは小さな水溜まり。

よく見ると、水が湧き出していた。

「わぁ…すごい…」

「疲れたでしょう。ここの湧き水はおいしいですよ。」

修一さんは両手で水をすくい飲んだ。

「樹々さんも飲んでみませんか?」

私も修一さんにならって飲んでみる。

「おいしい!何だか、ホッしちゃった。」

「ここまでがんばりましたからね。」

修一さんが頭をなでてくれた。

「ここの湧き水を別荘まで引いてますから、ここまで来なくても飲めるんですけど、歩いて苦労した分、おいしく感じますね。」

私達はしばらく休んだ後、別荘に戻った。



前へ 次へ しおりを挟む


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -