アルバイト

朝起きてバイトへ行く支度をして、お金がないから朝食は抜き。
一時間かけて駅まで歩いてそこから電車に乗って10分。
たまのことなら良い気分転換かもしれないけど、これが毎日のことになると歩くのがキツく感じる。
そのうち、ただ黙々と歩くだけじゃ仕事する前から疲れちゃうから空を見上げたりしながら「空ってこんなにも青いものだったのか…」とか「あの白い雲はどこまで流れていくのか…」そんな当たり前のことを考えながら歩くようになりました。
今までは毎日に追われて空を見上げながら歩くなんてしたことなかったからある意味、新鮮な毎日でした。
そんな通勤途中、いつも川沿いの道を通るんだけど、そこは桜並木になっていて、春になると綺麗な桜の花を咲かせるんです。
だからそこを通る度に足を止めては桜を眺めていました。

来年の今頃、僕はどうなっていて、どんな気持ちでこの桜の花を眺めているのだろう。
そんなことを考えると、メジャーデビューという企画の大きさに気持ちが負けそうになることがしばしありました。
取り返しのつかない人生の選択をしてしまったのではないか?
そんな不安を抱えつつも、一度歩き出した道なのだから、進むしかない!
そう自分で自分を励まして気持ちを奮い立たせていた時期だったと思います。

アルバイトは一日6〜9時間。
ファミレスの接客の仕事をしてました。
昔のデパートの最上階にあるようなとても広い店で、端から端までの距離がかなりあって、これがまたけっこう歩くんです。
不慣れなこともあって、最初の頃はよく失敗しては怒らることもたくさんあったけど、緊張感もあったし、新鮮さもあったせいか楽しかったですね。
ところがそのうち仕事に慣れてくると、理不尽なことで怒られるとイライラしたり、やる気を失くしそうになることもありました。
でも生活のため、メジャーデビューのためと思って一生懸命に働きました。

バイトが終わると、またまた歩いて家まで帰らなければなりません。
仕事をした後ですから当然疲れていますし、朝も昼もほとんど食事をしていませんからフラフラの状態です。
夜とはいえ真夏ですから暑い中を歩くのはとても体力を消耗します。
「もう嫌だ」と何度も立ち止まりそうになりましたが、今ここで立ち止ったら、なぜたかメジャーデビューできないような気がして、一歩一歩頑張って歩いて家まで帰っていました。

昔の僕は、ちょっとでも疲れるとタクシーで帰ったり、嫌なことがあるとお酒を飲みに行き、一晩で何万も使ったり、年に何度も旅行へも行っていました。
嫌なことから逃げる術、嫌なことを忘れる術を探し続けていたように思います。

楽をしたかったらそれだけの努力をしなければならない。
苦があるからこそ楽があるということにこの頃から気づかされたように思います。

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