オーディションの誘い

アルバイトが決まり、初出勤前日、家のポストの中に僕宛の一通の手紙が入っていました。
差出人を見ると音楽振興協会というところからでした。
実は数年前ではあのましたが、この音楽振興協会へ作品を送ったことがありましたので、おそらくそれでだとは思いますが、オーディションを受けてみないかという誘いの手紙でした。
なんだかタイミングが良すぎるこの展開にちょっと驚きました。

このオーディションに受かればCDを出すことができる。
すなわち夢にまで見たゴール。
今の僕にはもったいないぐらいの誘いでした。
でも今の実力ではこのオーディションに合格する自信はありませんし、間違いなく落選することは目に見えて分かります。
締め切りまで後4ヶ月。
このオーディションにすべてを賭けてみたい。
締め切りまでの4ヶ月間、夏目和沙の全ての力を出し切って勉強しようと強く思いました。

そんな僕の思いを更に強くする出来事がありました。

アルバイト初出勤前夜、明日は不慣れな職場でちゃんと仕事ができるのかとか、いろいろ考えていたら神経が高ぶっちゃって、なかなか眠れません。
何度も寝がいりをうつうちに、もう寝るのは諦めて、作詞講座のテキストを読んでいました。
最初のページからひとつひとつ丁重に読みました。
何時間かかったかもう覚えていませんが、テキストを読み終えたとき、達成感からかある決意をしました。
それは今までのプライドや自信は捨ててゼロから始めよう。
テキストに書かれていること、つまり先生の言うことを忠実に守れば間違いはないはず。
だからこの先生を信じてみようって、心から素直に思えたんです。
そう決意して、部屋のカーテンを開けたら、もうすでに外は明るくなっていました。

[ 78/87 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -