電子ピアノ

作詞講座のテキストを読んでいて気がついたのですが、作詞をする上で、多少は楽譜が読めた方がいいと書かれていました。

独学で済む話とも思ったのですが、以前から何か楽器を習いたいと思っていたこともあり、一般的に万能な楽器といわれているピアノを習うことに決めました。

家から音楽教室のある街まで徒歩で一時間。
バスを使えばそんなに時間はかかりませんが、失業中の僕にとって、無駄に使えるお金はありませんから、節約のために歩いて行きました。

音楽教室の前まで来て、少し緊張しながらドアを開けて受付へ。
「ピアノを習いたいのですが、初心者で大人ですけど大丈夫ですか?」僕はそう言って、自分の今の現状を簡単に説明しました。
僕の話を聞き終えた受付の方は、しばらくの間、体験入学をしてみてはどうかと進めてくれました。
ここの教室は、体験入学期間中は電子ピアノを習い、頃合いをみて正式入会する人が多いとのこと。
体験入学期間は月謝が安いこともあり、僕は電子ピアノを習うことにしました。

一週間後、レッスン初日を迎えました。
今日から週一回、音楽教室へ通うことになります。
レッスン初日は、初心者ということもあり、電子ピアノに触れることから始まりました。
右手でドレミ…を弾きながら左手の指三本を使ってコード(和音)を弾くといった具合にレッスンは進められました。
受付の方が先生に僕の事情を説明してくださったのか、レッスンの合間に音符の読み方の指導もしてもらえました。

家には15年以上前に購入した古いキーボードがあります。
ピアノの鍵盤と比べると、大きさも重さも違います。
早く上達したいのならピアノで練習した方がいいと先生から進められていたのですが、だからといってピアノを買えるお金など当然ありません
今ある与えられた環境で、できる範囲で頑張るしかない。
だから意地でもキーボードで練習して上達してやる!と毎日練習をしていました。

音楽教室には定期的にメンバーズパーティというのがあって、生徒さんが日ごろ練習している曲を発表する催しがありました。
いわゆる発表会です。
入会して三ヶ月ぐらいたった、あと少しで体験入学期間が終わる頃、僕はその発表会に参加することになりました。
その頃、僕は昔から好きでよく聴いていた華原朋美さんのI'm proudを練習していたので、その曲で発表会に挑むことにしました。

発表会の前日、先生からピアノの他に歌を歌ってくれないかと頼まれました。
電子ピアノにはカラオケ機能が付いていて、そのデモストレーションをして欲しいとのこと。
僕はカラオケへ行っても聴き役専門で、人前で歌うなんてとんでもない話でした。
当然、断るつもりでしたが、何事も経験と自分に言い聞かせて、この話を受けることにしました。

[ 74/87 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -