現実の壁

2001年1月、夏目和沙のメジャーデビューへの道の企画がスタートした。
目標はCD発売、レコード会社所属、これらのどちらか達成できたらゴールとした。

軍資金100万円、作詞講座教材、カセットレコーダー、辞書など、これらがメジャーデビューへ向けて用意した物。
これらを目の前に並べ、デビューへ向けて何をしよう。
これが最初に考えたことでした。

オーディションを受けるか考えたりもしましたが、今の自分の実力では到底無理だということも分かってましたし、何よりも作詞家のオーディションが全く無い現状でした。

とりあえず作詞の通信講座を受けることにしました。
第一回目の課題は「ことばからの発想」
あらかじめ与えられた言葉を使って作詞をするというもの。
例えば、手紙・街・仕事・夢・部屋といった具合に、これらの言葉を詞の中に入れて、発想して作詞をしなければなりません。
またこれが意外と簡単ではなく、とても難しいものでした。
なぜなら、今までは何の制約もなく、自由気ままに書いていたものが一つの枠に縛られることの難しさを痛感しました。

一ヶ月後、何とか自分の納得いく作品が出来上がって、課題を提出しました。
これがデビューへ向けてのささやかな一歩前進となりました。

更に一ヶ月後、結果が却ってきました。

結果の入った封筒を手にすると、開封するのが怖くてすぐには開けられませんでした。
どんなことが書かれているのかと思うと不安で、それていて少し期待感もあったりして…。
それでも不安な気持ち抑えて封を切りました。
「どこにでもあるような作品ですね」
結果はあまり良い評価は頂けませんでした。
最初から全て簡単に上手く行く訳ないと頭では分かっていたつもりでしたが、僕にとっては一ヶ月かけて試行錯誤した最高の作品を提出したつもりでいましたから、こういう評価が却ってくると、自分の全てが否定されたみたいに感じました。
現実はそんな甘くない、わざわざ仕事を辞めてまでやらなきゃならない事だったのか、やっぱりメジャーデビューなんて無理だったんだ。
そんな事を考えているうちに、全てのやる気を失ってしまいました。
それから一週間ぐらい毎日テレビを観たりしながらダラダラ過ごしていました。
そんなダラダラした毎日でも 、ぼんやりではあったけど、これから先の事を考えていました。
一度決意したことを結果も出さずに放棄してしまっていいのか…。
今ここでリタイアしてしまったら、僕が次に進むべき道はあるのだろうか?
もうメジャーデビューへの道を歩み進んでしまったのだったら今更、後戻りはしたくない。
こうなったら何が何でもメジャーデビューをしたいし、駄目でも自分で何らかの答えは出したい。
そう決心をしてこの企画を続けることにしました。

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