磯原駅〜湯本駅B

こんな時に限って携帯の電池がなくなりました。
僕は、持っていた電池式の充電器を携帯につなぎましたが、携帯の充電ランプは点灯しません。
携帯が使えない……。
もう頭の中はパニックです。
よく恐怖映画などで、主人公が殺人鬼から車で逃げるシーンで、こういう時に限って車のエンジンがかからなくて、何度もキーを回すシーンがありますよね。
僕もまさにそんな感じで、何度も何度も充電器を抜き差ししてみましたが反応しません。
どうやら充電器が壊れているようです。
このまま道に迷ったら野宿か……なんて思い始めました。

最初から無計画・金無し旅行なのですから、野宿も覚悟しいましたが、いざそういう状況になるとちょっと抵抗があります。


さて、これからどうするか?
一か八かこのまま先へ進んでみるか?
それとも元来た道を引き返すか?
僕は考えた末、元来た道を戻ることにしました。
一度通って来た道の方が暗くなってから有利だと思ったからです。

引き返そうとしたその時、前方からおばあさんが一人で僕の方へ向かって歩いて来ます。
これはチャンスです。
こんな状況でも少し恥じらいがあり、声をかける勇気がなかったのですが、思い切って声をかけます。
「すみませ〜ん、泉駅(湯本方面)までの道を教えて下さい」
おばあさんは快く道を教えてくれるのですが、やはりご年配の方なので、ちょっとハッキリしない感があったんです。
僕は気が動転していたし、急いでいることもあり、かなりぶっきらぼうな物の聞き方になってしまって、今にしてみたら、せっかく親切に教えてくださったのに悪いことをしてしまったと反省しています。
それでもお礼はきちんと告げて、おばあさんと別れ、僕は教えられた道を急いで進みました。
もう無我夢中に走って進むと、道路を中心に左側に広大な田んぼ、右側は住宅地が見えてきました。

まだ早い時間だったら勝負に出て、このまま真っ直ぐ進んでもよかったのですが、辺りは暗くなりかけています。
ここは慎重に行きたいところです。
僕は住宅地の方へ進み、もう一度、誰かに駅までの道を聞くことにしました。
辺りを見渡すと、草むしりをしているおじいさんがいました。
さっきの反省を活かし、おじいさんに丁重に声をかけ、駅までの道を教えてもらいました。
僕は、教えられて道を湯本駅へ向かって歩き出しました。。

この後、もうどこをどう歩いて来たか覚えていません。
僕が湯本駅に着いた頃には、日もすっかり暮れていました。

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