柏駅〜佐貫駅A

取手駅に着くなり、僕は駅の運賃表を見に行きました。
実は、この旅が始まってから駅へ寄る度に、現在地から自宅のある駅までの料金を確認していました。
きっと、リタイアするなら今のうちだよ、さぁどうする?みたいな思いがあったのかもしれません。
でも、いつもはリタイアしたいという弱い気持ちを押さえることが出来ました。
ところがこの時は違いました。
ここからならまだ1380円で家に帰れる……。
もうこの旅を終わりにしたいと思ってしまったのです。

今更帰って何になるのだろうか?
でも僕にはもう進む気力はもうない。
だったらどうしたらいいのか?
そんな自答自問を繰り返しているうちに、とりあえず今日はもう休んで、この先を続けるのかリタイアするかを考えたいと思いました。

取手で宿を取ることにした僕は、携帯でホテルの検索をし始めました。
携帯をイジりながら、本当に、本当にこれでいいのか?
また違う考えが浮かんできました。
ホームページを見てくれている人の中には、僕の沖縄移住をまるで自分のことのように喜んで応援してくれていた人も居た。
それなのに僕はその期待に応えることが出来なかった。
沖縄移住も失敗して、この旅もリタイアしたらどうなるのだろう。
もいこれ以上、裏切ってはいけない。
何のために歩かなきゃいけないのかなんて解らないけど、もうそんなのどうでもいい。
進むしかない状態なら、歩いてでも進むしかない。
そう考えを改め、僕は先を進む決意をして国道6号線へ戻りました。


再び歩き出し頃には、あれだけギラギラしていた太陽は雲の上に隠れています。
日が差さなくなった分だけ少し涼しく感じましたが、歩き続けているせいか、体中のうっちこっちから汗が滝のように流れてきます。
それに加えて足も痛い。
僕は、足の痛みを我慢しながら、国道6号線を進みました。

佐貫駅の近くに着いた頃には、片足を引いて歩いていました。
着ていた黒のTシャツは汗で所々白くなっています。
意識もモウロウとしながらフラフラしながら歩いていましたから、擦れ違う通行人も僕を避けるように通り過ぎて行きます。
僕はこの旅が始まってから、人と擦れ違ったり、車が後ろから来る度に、知らない人から見て僕はどう写っているのかをとても気にしていました。
平日の昼間にいい年をした男が一人で住宅地の中を歩いたり、歩行者のいない国道沿いの歩道を歩いていたからです。
でも、もう誰がどう思うが、誰が何を言おうがもうどうでもいいと思えました。
そんなどうでもいいことを考えてる暇はない。
何があっても青森まで行く!
この時、改めて青森まで行く決心をしました。
何とか佐貫駅に到着した時は、心身ともに疲れ切っていましたが、何とも言えないような達成感がありましたね。

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