沖縄最後の風

那覇空港に到着した。
数時間後には東京に戻ることになる。
そうしたらもう簡単には後戻りはできないであろうことは、冷静に考えなくても判っている。
僕は空港のロビーで、自分の選択は、本当は間違っていたんじゃないかという後悔、杏伍が僕に無断で保証人の解約の準備を進めていた事などを頭の中で必死に整理していた。
でも、考えれば考えるほどに訳が判らなくなり、しばらく放心状態だった。

飛行機の搭乗案内のアナウンスで一瞬、僕は我にかえった。
最後に、せめて沖縄の空気に、風に触れたいと思って、空港とゆいレール(モノレール)の連絡通路へ飛び出した。
そして、沖縄へ来てから今日までのことが走馬灯のように思い出され、後悔と悔しさが吹き出してきた。
僕はその場で泣き崩れた。
そんな僕の前に杏伍がやって来た。
杏伍は「もういい?行かないと間に合わないよ」と、急かすように言ってきた。
その様は、もう僕を迎えに来てくれた、ほんの3日前の杏伍とは別人だった。
僕は、杏伍に催促される形で、飛行機に乗り、東京へ戻ることになった。


実家に戻ってから、もう後悔ばかりして、沖縄で出会った人達や沖縄での生活を思い出すと、涙が止まらない日々を過ごしていました。
この時期は本当に毎日が辛かった。
沖縄移住の失敗に付け加え、親友の裏切りで、いっそのこと無になりたいとまで思っていた。

それでも1ヶ月ぐらい経った頃、ようやく気持ちも落ち着いて来て、前へ進む決意をしました。
もう一度、沖縄移住へ向けて歩き出したいと思えるようになったのです。
前へ進むためにはこのままではもちろん無理です。

まずは仕事を探して、また一からお金を貯めるところからスタートすることにしました。
そして、アルバイトではありますが、仕事に就くことができました。

仕事を始めて最初の頃は、心機一転頑張らなきゃ的な感じでいたのですが、少し慣れてきた頃から、仕事中に意識が沖縄へ飛ぶことがしばしばありました。

浦添を自転車で走っていたり、民宿の部屋でテレビを見ていたり、国際通りを歩いている自分がいます。
フッと我に帰ると現実の自分が仕事をしています。
もう沖縄が夢なのか、今ココに居る自分が夢なのか、現実と夢の区別がつかない状態でした。

体と心が別々に歩いているような感じです。
よく考えてみたら、元気になった自分をアピールする為に、友達や職場で元気な自分を無理に演じていたことに気がつきました。
本当はしんどい…。本当は辛い…。

沖縄移住再挑戦するほどの気力なんか今の僕にはない。
だったらなぜ今、僕はこの仕事をしているんだろう?
何の目標もないまま、時間だけがただ過ぎて行きます。
何とか今の状況から抜け出したいと思えば思うほどに落ち込む日々が多くなりました。

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