決断

杏伍が沖縄に居られるのはたった3日間。
それまでに話し合って結果をださなければならなかったが、なかなか結果はでなかった。
僕が何を躊躇していたかというと、一番のネックは資金であった。
この問題さえ解決できればこのまま移住を続けたかった。
この時点で用意してあった自己資金は、お店の賃貸契約や家賃、沖縄での生活で費やしてしまったため、半分の80万近くにまで減っていた。
沖縄でやろうと思えばできない額ではない。
でも、ギリギリすぎて失敗する可能性もある。
これが僕を悩ませる理由であった。

結局、二人で話し合っても、何の答えを見出だすことができぬまま、杏伍が帰る前日の夜となった。
杏伍は突然、那覇空港へ行きたいと言い出した。
僕は空港へ行ったからといって、答えは何も見出せないと思いつつも、気分転換になるかもしれないと思い、僕たちは夜の空港へと向かった。
空港へ着くと杏伍は何も言わずにANAのカウンターへと向かった。
僕はロビーで一人で座りながら、黙って杏伍が戻って来るのを待った。

しばらくして杏伍が戻って来た。
そして、僕に向かって白い封筒を差し出した。
僕は、封筒を受け取って、中身を引き出した。
そこには東京行きの航空チケットが入っていた。
「これで一緒に帰ろう」杏伍は言った。
僕はますます悩んでしまった。
ここまでしてくれる友達は他にはいない。
僕が脅迫状をもらって帰りたいと言ったら、仕事を休んでまで迎えに来てくれた。
一体どうすればいいのか…今までの人生の中でここまで悩んだことがないぐらいに迷い悩んだ。


翌日、決断ができぬまま、とうとう杏伍が帰る日を迎えた。
もう僕の口からは「どうしよう……」しか出てこないのに対して、杏伍は「帰ろう!」としか言わない。
そんな繰り返しをしているうちに、時計はすでに16時を差している。
今夜の20時の便で杏伍は帰ってしまう。
僕は最後の決断を迫られた。

杏伍が帰った後、また僕は一人で沖縄で生活をしなければならない。
それを想像すると、たまらなく寂しかった。
それに加え、杏伍に会ってしまったことで里心がついてしまった。
時間に迫られていることも手伝って、僕はつい一緒に帰る方を選択してしまった。

僕が帰る方を決断をすると、杏伍は素早く引っ越しの手配をした。
1時間後、引っ越し業者が来て、お店から荷物は運び出された。
荷物を運び出された店内を見て、果たしてこの選択は正しかったのであろうか?と僕はぼんやり考えていた。
そんな僕を見て杏伍は「向こうへ帰ったら一緒にハローワークへ行って仕事を探そうよ。もちろん付き合うし、旅行やライブにもまた行こうよ!」と言って僕を元気つけた。

[ 17/87 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -