出会い



2006年1月16日、いよいよお店の引き渡し日となった。
この日の朝、僕は不動産屋からお店の鍵をいただき、入店することになった。

入店後、僕は、まだ営業するアテのない店内を見渡し、窓側の二人席に腰を下ろし、ひとり静かに考え事をした。
もちろんこの時は帰る方に気持ちが傾いていたので、杏伍が迎えに来るまでの10日間をどう過ごせばいいのか?
果たして解約はできるのか、解約した後はどこへ帰ればいいのだろうか、実家へ帰れるのだろうか、両親へは何と説明しようか……様々な思いが交差して不安で胸がいっぱいになった。

その日の夕方、大家さんが僕の様子を見に店に顔を出した。
大家さんから開店準備の進み具合を聞かれて、僕はごまかすのにとても苦労したのと同時に心苦しくもあった。


大家さんが帰った後、以前からサイト上でお世話になっている沖縄のSさんへメールを送った。
沖縄へ着いてから今日までのこと。
そして、例の脅迫状のことを説明した上で、沖縄移住をやめることにしたこと、相互リンクをしていたので、ホームページを閉鎖したからリンクを外して欲しいとメールをした。
そしたら、直接会って話をしませんか?とSさんから返事が来た。
僕は脅迫状をもらってからというもの、沖縄の人みんなが敵に見えていた為、ちょっと会うのには抵抗があったのだが、この数日間、満足に誰とも話をしていなかった寂しさもあり、勇気を出して会うことにした。


メールを交わした翌々日、Sさんと初めて会うことになった。
実は会う間際までドキドキしていた。
なぜならサイトで知り合った人と会うのは初めてだったからだ。
ところが実際に会ってみると、Sさんはとても気さくで親切な方で、落ち込んでいた僕を励ましアドバイスまでくれた。
その中でも「ここまで来ただけでもスゴイことなんだよ」と言ってくれたのが本当に嬉しかった。
今まで誰に相談しても「頑張れ!」としか言ってもらえなかった中で、Sさんの言葉は、沖縄へ来てから初めて僕が認められたような気持ちになった。
他にもたくさん雑談をして、久しぶりに人と話ができて、僕は完全にリフレッシュすることができた。
こんな近くに僕を理解してくれる人がいるんだから、やっぱり沖縄でこのまま頑張りたいと今度こそ本当に強く思えるようになった。

※写真はSさんに連れてってもらったお店の外を撮ったものです。
この時撮った写真はHPでは公表していませんでした。
自分にとって沖縄で立ち直るきっかけになった本当に大切な思い出だからです。
でも今回はほんの一部ですが、載せることにしました。

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