脅迫状

移住生活2日目。
16日のお店引渡しまで、那覇市内の安いホテルで生活をすることになった。
この時の僕の心境は、沖縄で頑張ってお店を経営して生活したい気持ちと、杏伍が迎えに来たら一緒に帰りたい気持ちが複雑に交差していた。
こんな中途半端な気持ちだったからか、2日目にして重度のホームシックにかかってしまった。
観光で何度も訪れているとはいえ、知らない土地だから当たり前なのかもしれないけど、なんだか街の雰囲気に馴染めなかった。
すれ違う人すべてが僕を「よそ者」のような目で見られているような錯覚を感じた。
だから常にもう帰りたいと強く思うようになっていた。
それでも、役所へ行って、転入届けの手続きをしたり、お店を経営するために食材などの仕入れ先を調べたりして、移住2日目は終わった。


移住生活3日目。
今日は仕入れ先を探すために漫画喫茶のパソコンで調べものをしていた。
内地にいる時から感じていたのだが、沖縄にある会社はHPのない会社が多いような気がする。
何度、検索してもヒットしない。

パソコンで調べるのを諦めて、電話帳で仕入れ業者を調べてみることにした。
漫画喫茶を出て、国際通りで公衆電話を探しているうちに首里城へ向かう道へと出て来てしまった。
せっかくなので、気分転換に首里城まて歩いてみることにした。

僕は沖縄へ旅行で訪れる時は、必ず首里城へは行く。
この高台から眺める那覇の街が大好きだからだ。
そして、今日も同じように街を見下ろしてみた。
沖縄を好きになって、いつか絶対、移住したいといつも思っていたあの頃。
今、実際に移住して僕はここにいる。
長年の夢が叶ったんだからもっと嬉しそうにしなきゃ駄目だ。
僕は、なんだかあの頃の、移住を夢見ていた頃の自分を取り戻せたような気がした。
この首里城で感じたことが僕のホームシックな気分をリフレッシュさせてくれた。
ダメでもいいじゃん。沖縄でやれるとこまでやってやるぜ!と、改めて決意させてくれた!

ところがこの決意を失うようなことがこの後に起るのであった……。
それは、首里城へ行った日の夜、僕の携帯電話へ知らない人からメールが届いた。

メールの内容は“内地の人間は帰れ!”だった。
他にも歴史的なことも書かれていたが、「帰れ」の文字だけが印象に残った。
僕は一瞬にして恐怖感を覚えた。
どうやら僕のHPを見てメールをしてきたようだった。
これが沖縄出発前の出来事なら冷静に対処できたかもしれない。
でも、観光で何度も来ているとはいえ、右も左もわからない土地で、何が起きても助けてくれる人などいない。
僕は迷うことなく、すぐにホームページを閉鎖して、杏伍へ連絡して帰る決意をしたと伝えた。
杏伍は今月末に迎えに来ると言ってくれた。

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