少年軍人
プロローグ


…暑い。身体がところどころ痛い。――何故?

疑問符を浮かべて瞼を開くと、視界いっぱいに青が広がった。
ゆっくりと視線を巡らせる。ああ、これは空だ。雲一つない青空。
右。少し離れた所には木々が生い茂っている。周りは森に囲まれているらしい。
手前、俺の近くは大きな石が並んでいる。まるで墓石の様なそれは、割と大きさがまちまちだ。
左。同じく、少し離れた所は森の様だ。
手前、やはり並んだ石。
むくり、と上半身を起こして再び辺りを見回す。
倒れていたのは土の地面の上らしいが、ジャケットが敷かれてあった。俺は着たままだから、誰か別の奴のものだろう。成程、地面に寝ていればそりゃあ身体が痛くなるか。
地面に敷かれたままのジャケットを拾い、暑いので俺も脱いでそれと一緒に抱える。雑に扱うのは気に食わなくて、両方綺麗に畳んで抱え直す。

そうして改めて、周りを見回した。

ご丁寧に、近くの木の根元に『この先500m位までの様子を見て来る・0956』と彫ってあった。500mか、ならそんなに遠くない。0956、というのは、俺の腕時計が9時56分を指していたという事だろう。腕時計を確認。10時25分。まあまあ経っているし、待機する事にした。
日向は暑くて体力を削られるので、ジャケットを抱いて日陰に移動。腰を下ろし、何が起きたのかを考える。
――内部にスパイがいた事が発覚し、そいつを尋問にかけた。それははっきりと覚えている。そう、仲間の一人がキレて俺のデスクの上でそいつに拷問を始めた時、ちょうど奇襲がかかって、その後、――。

「その、あと…」

ああ、そうだ、司令部も軍の支部もない市街地に攻め込んで来たから、全力で迎え撃って。
俺も自ら出撃して、それから、
――それから?

「…あれ?」

戦地に着いた後がわからない。気が付いたらここにいた。
そんな馬鹿な。どこだここは。
森だし石だしやけに気温が高いし、どう考えても司令部どころか日本ですらなさそうである。


「――チョーカン!!」
「…え、?」

放心しかけていた所に、走って来る足音と聞きなれた声が聞こえて顔を上げる。
見慣れた制服姿の見慣れた相棒が、こちらに向かって駆けて来て居た。

「目ぇ覚ましたみたいだな!」
「…、ああ、」
「幹部連中だけだが、他の奴も居た。取り敢えず合流しようって事になってっけど…動けるか?」
「ん、大丈夫だ」

差し出された手を掴んで立ち上がり、尻を叩いて土を落とす。

「先に集まった奴から会議を始めてる」
「状況を把握出来た奴はいるか?」
「情報が無過ぎて仮説も立てられてねぇ」
「…そうか」

とにもかくにも合流するのが先だ、と告げる相棒に一つ頷き、彼の指す方向へと走り出した。


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次回から会話onlyです




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