書いてみたやーつ
真面目なバニル


神とかいう、努力した人を苦しみから救ってくれる高次元の存在がいるらしい。
が、『みんな』はどれだけ頑張っても救われたりなんかしなかったし、毎日祈っても何も変わらなかったので、私はいつしか信じるのをやめた。
故に。
死後に現れた、女神を名乗る謎の高次元存在が、私に「あなたは死にました」「可哀想な人生だったから、天国なんて何もないクソつまんないところじゃなくて、驚きと喜びに満ちた異世界に転生させてあげる」などと偉そうに言い出した時、私が一番に感じたのは――『怒り』だった。
やつは、「大変な人生だったので救いをあげる」と言った。だが、死後に救いを与えるなどと、そんなふざけた話があるだろうか。
既に生涯は終わっているのに、『みんな』はもう死んでしまったのに、その後の救いなど一体何の意味があるのか。
救いがもたらされる筈だったのなら、何故生きているうちに与えてくれないのか。
苦しみと悲しみに満ちていた『みんな』の人生に、何故少しの喜びすら与えてくれなかったのか。
…なんたる怠慢。救いを信じて絶望に死んで行った兄弟達を思うと、怒りで頭がどうにかなりそうだった。
神は、自らの怠惰でどれほどの人間が絶望しているかを自覚していない。そして、悲しむ者が出ている以上、その無知は罪である筈だ。と、私はそう考えた。
兄弟の誰かから聞いた話に曰く、神は人の信仰により生きているらしい。人は神を信仰し、神は人に加護や救いを与える、と言っていた。

ならば。

神が不信心を裁くというのなら、人もまた、神の怠惰を裁くべきなのではないか――?
やつに『心に反応して奇跡を起こす杖』を渡され、新たな生へ旅立つようにと光の柱の中へ落とされながら、私は誓った。
――いつか必ず、怠惰なる神々を殺し尽くしてやる、と。


***


「我輩が貴様を飼ってやろう」

仮面をした悪魔は、笑いながら私に首輪をかけてそう言った。

「貴様のその殺意を鋭く研いでやろう。その憎しみを丁寧に磨いてやろう。神が疎んじる存在の使う技と神が愛する存在の犯した罪を教授し、浄化を司る女神すら呪い殺せるように育ててやろう」
「…何が、望み?」

白い手袋をはめた手が私の頬を撫で、つうと弧を描いた唇がゆっくり開く。
仮面に描かれた目をじっと見つめる私の耳元へ、悪魔は楽しそうな様子を隠そうともせず、囁くように、しかし興奮に声を高めながら、自身の目的を告げたのだった。

「今日から貴様は、我輩の家畜になるのである」

――…それから私は、『見通す悪魔』バニルと共にいる。



**********
バニルは魔王に従う悪魔(わるいやつ)→バニルが日々を平穏に生きているということはそのぶんどこかに苦しめられている人々がいる→魔王を倒して!って神があれこれしてるのに人々が救われていない→神は本気で対応していないのでは?→怠惰!!!!
って感じでバニルと一緒にいるだけで常に神を憎む優秀な食糧ちゃん
そのうちバニルを好きになるけど、バニルはわるいやつなので、一緒にいて幸せを感じることは悪いことなのでは……とか苦悩しだして食糧としてさらに優秀になる
バニルだけが得をする話

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