書いてみたやーつ
どんな顔をしてそれを選んでくれたの


「覚えているか…?去年、薔薇の花束を欲しがったお前に…私は、誕生日プレゼントとして99本の薔薇を用意したな」

部屋の中には、私と彼女の二人きり。
布団に横たわり、目を閉じたまま動かない彼女に話しかけても、当然返事は無い。

「…今日がお前に会える最後の日だって聞いたから…今日は、999本持って来た。家の前に積んであんだけど…もちろん、受け取ってくれるよな?」

きちんと茎のトゲを取った真っ赤な薔薇を1輪、髪飾りのように耳元に挿してやると、花びらが一枚落ちて、息をするのをやめた彼女の唇にふわりと乗った。
血の気の無い白い肌と、口紅よりも毒々しい赤の、極端過ぎるコントラストに目が眩む。

「ああ…似合ってる。とても、きれいだ」

彼女はこの後、炎に焼かれる。
もう二度とその肌に触れることは出来なくなる。
栗色の髪も、きらきら輝く瞳も、小さな手のひらも、やわらかい体も、全てが灰になるのだ。
そう思うと、頬を撫でる指先が震えた。

「〇〇…」

彼女の瞼は永遠に閉ざされてしまった。

「〇〇…っ」

一緒にいる時の花が綻ぶような笑顔も、私の名前を呼ぶ鈴の音のような声も、弱い力で精一杯に抱き締めてくれる温もりも。
彼女の全ては、永遠に失われてしまったのだ。

「…愛して、る」

――きっと、私はもう他の誰かを愛することは無いだろう。
私の愛は、永遠に彼女のものだ。

「…お前を、っ…ずっと…」

花びら越しに口付けた唇の冷たさが、胸に突き刺さった。
もう一度だけ、愛してる、と囁いて、冷たい額にキスを落とす。
今年の誕生日に渡そうと思っていた安物の指輪を、彼女の左手の薬指にはめてやって、私は逃げるように彼女の家を出た。

彼女が灰にされるところなんか、見たくはなかった。



**********
娘の葬式の日に、家の前に999本の赤い薔薇が積まれてるって、ご両親からしたら相当ホラーですね
薔薇のお値段は一本50円から500円くらいだそうなので、一本200円のものだとして99本の薔薇は19,800円…これならまあ、お年玉を貯めれば買えるレベルですが、999本では199,800円ですからね
主人公がいいとこのお嬢様だと察することができますね

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