書いてみたやーつ
七生報国


※短い文のつめあわせ感



仕えていた主が病に冒されて死んだ後、諸々の手続きをしに来た政府の役人に、刀解と新たな主に仕えるのとどちらが良いか、と問われた御手杵は、迷わず新しい本丸に引き取られることを選んだ。自分はまだ戦えるし、戦いたいし、前の主が死ぬ前に『戦え』と言っていたから、更に戦い続けることを選んだ。最期の願いを叶えてやろうと思うくらいには、御手杵は前の主を気に入っていたので。

引き取り先の選定等面倒なことは役人に丸投げした為、御手杵は新しい主が男か女か、老いているかまだ若いのかも知らない。何も聞かずに黙って運ばれている。御手杵は新たな主がどんな人間かということにはあまり興味がなく、ただ、新たな主がどんな采配でどのように御手杵を運用するのかということだけで頭がいっぱいだった。ひとつの槍として、新たな主の采配に従って戦うことをひたすら楽しみにしていた。人の身体と心を得ても、御手杵は心底槍である。

新たな主は若い男だった。背が高く細身なところが前の主に似ている。褒められた時の五虎退のような顔をして自分を迎えた主は、近侍らしい江雪左文字に促され、ペコリと頭を下げて挨拶した。
「審神者名『修芽』だ。これから宜しく」
「おう。三名槍が一本、御手杵だ。切ったり薙いだり出来ないけど、刺すことだったら誰にも負けないぜ」
名乗りを上げると、主との間に契約が結ばれる。と同時に、前の主の元で積んだ経験や得た力に制限がかかるのを感じた。刀剣の力は、主の実力に応じて解放される。新しい主はまだ審神者になって少ししか経っていないから、御手杵が今まで高めて来た力を全て解放するだけの実力も経験も無いのだろう。主は虎に逃げられた五虎退のような表情をしていたが、御手杵はまた鍛える楽しみが出来た、くらいに思ってあまり気にしていなかった。

「はあ?まだ軽傷だぜ、もう帰還なのか?」
「刀装が壊れたら撤退して」
「あと一戦くらい行けるって」
「ダメ!」
新しい主はかなり慎重だ。まあこれは、損傷が大きいと手入れに使う資材の量も多くなるので、駆け出しであまり資材のない現状では仕方ないことだと納得している。御手杵は槍の手入れに消費する資材が打刀や太刀に比べて多いことを知っていたから、そこは我慢することにした。
「…え、今日の出陣もう終わりなのか?」
「うん。あとは好きに過ごしてて良いよ」
「…そうか…」
だが、出陣数が少ないのだけは不満だった。日課と月課に必要な最低限しか出陣も遠征も無く、それ以外の時間は自由を与えられているが、御手杵としてはもっと戦場に出たいと思っている。もう一歩も動けないというくらい疲労困憊になるまで戦った後の風呂と飯と酒は最高なのだ、と前の主の元で知ってしまったから、少々疲れたくらいでは物足りなく感じてしまうのだ。
「そう思わねえか?」
「えー?それは御手杵さんが戦好きなだけじゃない?」
「いや、俺はわかるぜ!祭っつーのは燃え尽きるまでやるくらいが丁度良いんだよ!」
「…戦など、無い方が良いのです…」
「うーん…」

やっぱり出陣が足りない。内番の手合わせを多く割り当ててもらってはいるが、訓練では満足出来ず、フラストレーションは溜まる一方だ。敵の血を浴びないと戦った気がしないし、刃で肉や骨を貫く感触が恋しくてむずむずするし、体力が有り余ってそわそわする。
ので、御手杵は直談判することにした。主には従うが、文句を言わないとは言ってないし、思うところがあればはっきり言う。御手杵は槍だが、今は自分で考える心とそれを伝える口があるのだ。
「出陣したい」
「またか。…御手杵は、どうしてそんなに出陣したいの?」
「んー、何て言うか、落ち着かないんだよなぁ」
「落ち着かない」
「ああ。敵を串刺しにして、身体がぶっ倒れる寸前まで戦さ場を走り回って、そんで大将首獲るっつうのが、俺の…刀剣男士の、役割だから」
御手杵は、戦う為に人の身体を与えられたのだと思っている。戦わなければ、人の身体を得た甲斐が無いのだと。

「…僕は、せっかく人の身を得たのに、戦しか知らないなんて勿体ないと思う。確かに、刀剣男士の使命は御手杵の言う通りかもしれないよ。でも、折角の機会なんだから、皆には戦以外にも色んなことを知って、たくさんのことを経験して欲しいって思うんだ」
「んー…?でもそれじゃ、あんたはどうなるんだ?」
「僕?」
「審神者の使命は、歴史を守る為に敵を殺すことなんだろ?俺達に戦以外のことさせてたら、敵を殺せないじゃんか。そしたら困るのはあんただろ」
「困る…まあ、困るけど」





574:審神者やってるもやしさん
杵「前の主が言ってたぜ。『審神者がのうのうと生きることは罪であるから、審神者は生きる限り歴史修正主義者を殺し尽くす為に尽力しなければならない。敵を殺すことでのみ審神者は生きることを許される。過労死した審神者だけが良い審神者だ』って」
僕「!?」
杵「敵を殺さなきゃ、あんたが処罰されるんだろ?なら俺らはたくさん出陣して戦わなきゃなって、あんたの槍としてそう思ってるのも、出陣したい理由の一つなんだけど」
僕「!?!?!?」

僕の槍って言ってくれたのは凄く嬉しいんだけど、前の主さんの発言らしき言葉に混乱して素直に喜べなかった…
確かに任務をしないで政府の勧告を無視し続けるとかすれば処罰されるけども、審神者はそこまで追い詰められてないよ!?って叫んだよね
御手杵は「戦をしたい刀剣と戦って欲しい審神者で互いの利害が一致してるから出陣させてもらえる」と思ってたから「審神者だって戦したい筈なのに何故出陣を増やさないんだ」ってことで出陣を増やさないのかを聞いてきたんだそうで…審神者の任務はそこまできつくないよって言ったらイコール「審神者に益がないから出陣させてもらえない」だと考えたようで…凄くがっかりされた…
ちゃうねん…君の前の主が苛烈なだけなんよ…


575:審神者やってる名無しさん
!?


576:審神者やってる名無しさん
!?


577:審神者やってる名無しさん
!?



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ちなみに修芽は「しゅうが」と読みます

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