わんぴーす
そっくりさん


宿は無事確保出来た。
ので、現在酒場で一人呑んでいる。
カウンターの隅でブランデーを煽りながら、何気なく他の客の会話を盗み聞き、情報を集めた。ほろ酔いの男達の口の良く回ること。
…おかげで、状況を大分理解出来たが。


一人の海賊の言葉で始まった時代、自由と冒険、名誉と財産を求めて海に出る男達。
世は正に、大海賊時代。


と、だいたいそんなところだった。
そしてその情報から察するに、ここは私のいた世界ではもちろん無くて、そしてエドラスでも無い。
私は、まったく新しい、別の世界に来てしまったのだ。
貨幣の単位が違う時点で気付け私。

「…や、楽しけりゃ何でも良いけど…」

また一から文化や慣習を学んで、身に付けて、この世界に馴染むところから始めなくてはならない。決してその工程が嫌なわけではないのだが、体が覚えるまで反復するのは、その、些か面倒だ。

「…はぁ」

思わず、ため息がこぼれた。

「――おいアンタ、元気ねーな?男に振られたのか?」
「ん?」

唐突に肩を抱かれて、思考が途切れる。顔を上げて声のした方を見れば、赤い髪をした男がジョッキ片手に笑っていて。

「…」
「気にすんなって、アンタ美人だからな、そのうち見合った良い男が見付かるさ!」

がっはっは、と豪快に笑う酔っ払い。その顔は。

「――ギルダーツ!?」

先程思い出していた親友と、瓜二つであった。


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