わんぴーす
冒険の始まり


投げ出された場所は、見慣れた城下町ではなかった。

「…ここ、どこ」

見渡す限り、一面の青だった。
足元にはきらきらと輝く『青』が何処までも続き。
頭上には雲ひとつ無い『青』。そのなかで強い光がひとつ、世界を照らすのみ。
まるで、この世界を彩るのに他の色は必要ないのだと言わんばかりの『青』。
だが、それが真実で、それが全てだと信じてしまいそうな程に、それらはうつくしい色だった。

「…『私は宙を歩く』」

何もない空中を踏み締めながら、足元の『青』を見下ろす。
穏やかな風に揺らぐ波。その下に、微かに見える生き物の影。

「…海?」

見回す限り真っ青。360度の水平線。人の気配なんて当然なくて、さてどうしようかと腕を組む。

「…仕方ないか…。『ここに一隻の小舟がある』。『彼女を乗せた小舟は、まるで何かに導かれているかの様に真っすぐかの島を目指す』」

瞬間、目の前にはイメージした通りの小舟があった。
揺れない様にそっと乗り込むと、小舟はゆっくりと動き出す。
見知らぬ場所の地図なんて持っていないし、持っていたとしても、どうせここがどこなのかはわからない。
ならば魔法――私の進んできた魔導というものを信じて、運に任せてしまうのも、旅の一興である。

「『数刻経った頃、小舟はかの島にたどり着くと、役目を終えて燃え尽きた』」

速さが上がった小舟の中で、ごろりと寝そべって空を見上げる。
見知らぬ場所で一人という状況には慣れている。今度の旅はどんな冒険になるだろうか、高揚する心を押さえ切れずに一人笑った。


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