わんぴーす
旅立ち


15歳の時、両親が死んだ。魔物狩りの仕事中、一般人を庇って餌食になったらしい。
残されたのは膨大な数の蔵書と、5歳になったばかりの妹だった。

それから私は、妹が生活に不自由しない様にお金を稼いで、乞われるままに魔法を教え、仕事に同行させて経験を積ませた。
両親が残した大切なものを守らなくてはならなくて。妹は、立派に育てなくてはならなくて。
けれど、そんな私の必死さが、周りからは危ういものに見えたらしかった。

「ニア、もういい。にあはワシらが預かろう。お前は好きに生きなさい」
「マスター・マカロフ…でも、」
「…姉さん、わたしなら大丈夫ですよ」
「にあ?」
「姉さんがお母さんの代わりをしなくても、ヒルダがお母さんの代わりをしてくれます。お父さんの代わりならワカバやマカオもいますし、マスターだっているんです。姉さんは前みたいにいろんなところに行って、たまにおみやげをもって帰って来て、ぼうけんの話をしてくれればそれで十分です。わたし、ここでまってますから」
「にあもこう言っとる。…お前が消耗していくのは、にあにとってもワシらにとっても見ていてつらい。ニア。お前は、あっちこっちを旅して、気楽にふらついているのが一番似合う」


18歳、大好きな旅を再開した。
皆が支えてくれるから、にあが待っててくれるから。
肩の力が抜けた私は、また冒険を探してフィオーレ王国を出た。

20歳、旅の途中で『異世界』への行き方を見つけた。
この世界とよく似ていて、まるで鏡合わせの様な世界。
私と同じ顔をした同姓同名の人がいて、その人の妹も私の妹と同じ顔で同姓同名だった。どうやら本当に鏡合わせの様に、この世界の人物と同じ人物がいるらしく。
その世界の名前は、『エドラス』といった。

21歳。時折妹の元に顔を出しつつ、私は事あるごとにエドラスに行っていた。鏡合わせの世界が楽しくて、この世界での知り合いと同一の人物を探すのが趣味になっていた。

そんな折。
何時もの様にエドラスに行こうとしていたある時、空間を飛び越える瞬間に違和感を覚えた。何がどう違うのか、具体的な事はわからなかったけれど。
ただ、潮の香りがした、ような気がした。


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