わんぴーす
見えるの?これが?


「じゃあまず、ここに立ってね。踵を合わせて、背筋伸ばしてー、あ、だめだめ踵はつけたまま、顎引いて…そうじゃなく、まっすぐ前向いて…はーいそのままー」

身長、

「次、ここに乗って待ってて。動かないでねー…」

体重、

「次はこっちに座って、はいちゃんと背中くっつけてー、さっきみたいに背筋伸ばして…そうそうそのまま、前見ててねー」

座高、

「次はこれ持ってね、足を肩幅に開いて立って…このくらいね。腕は下に伸ばしたままだよ、肘を曲げないで、ゆーっくり息を吐きながらぐーっと握って」

握力、

「これで片方の目を隠して…こう、こんなふうに。…そうそう、そうしたら、今からわっかを見せるからね。わっかのどこかが開いてるから、どこが開いてるか指差してね。いきますよー」

視力、

「これをこう持って、耳にあててね。こんなふうに…、音が聞こえると思うから、聞こえたらそのボタンを押してねー」

聴力、

「思い切り、限界まで息を吸ったら、ここに吐いて、もう無理!ってなるまで吐き出してねー。息継ぎしないで、一息だけ、ふーって」

肺活量の計測。

「少しチクッてするけど、我慢してね」
「ちょこーっとだけ、切らせてもらうよ。危ないから動かないで、そのまま待ってねー」
「ごめんね、少しだけ削るよー」
「痛くない?大丈夫?」

血液、髪の毛、爪、角の欠片、鱗数枚の採取は、ニアの身体について解析するのに必要なんだ、と説明された。

白衣を着た大人達の間をあっちこっちするニアを、私は部屋の隅に立ったまま見ていた。
素直に言う事を聞き、大人しく従うニアを、良い子だね、と褒める彼らが、ニアについての調査にあたる科学者チームらしい。
最初に渡された書類は、彼らが行うニアについての調査に協力するように、という内容だった。
科学者チームが組まれるという事は、ニアの力がそれだけ重要視されている証拠になる。この世界における『海』とは、それほど大きな『力』なのだ。

「あの、大佐」
「ん?」
「肺活量を測ったら、息でなく海水を吐いていたのですが」
「…」
「あの海水も調査用に頂いても?」
「…ああ、構わないよ」

ふ、と調査員から目を逸らした先には、瞳孔が縦に広がった爬虫類の目で視力検査を受けるニア。

「うえ」
「…見えるの?これが?」
「みえる」

――知れば知る程、ニアが人間から遠退いていく。
私はいつまで彼女の『父』でいられるのだろうか、とまで考えてしまって、深く溜息をついた。


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