忠犬バスケ部の日常



『帝光中バスケ部にはキセキの世代と呼ばれる天才達がいる』

というのは、帝光中内外で有名な話だが、帝光中内でもあまり知られていない噂に、

『バスケ部が犬を飼っている』

というものがあったりする。実際は犬ではなく犬の様な人間だという事実は、どれだけの人間が知っているのだろうか。









「もしもし赤司さん、外周の途中ですがテーピングと湿布が切れてるのを思い出したのでこのまま走って買いに行っても良いですか?」

『うん、許可する』

「では行って来ます!」



携帯電話を閉じてポケットにしまう。少しスピードを上げて、通行人を追い越しながらただ走る。
ふと、スーパーの前で立ち止まる。入り口の前に段ボールが置いてあり、その横に書かれた文字と箱の中身を見ると、再び携帯電話を取り出した。



『…もしもし〜?わんわんどしたの?』

「もしもし紫原さん、まいう棒がセール中で」

『箱買いよろしく』

「了解しました」



携帯電話をポケットに押し込み、段ボール箱を持ち上げる。中身を数えながらスーパーの中に入り、レジへ向かった。


中略。


段ボールを抱えて走りだす。店員の驚いた顔はいつもの事なので忘れよう。しかしこれを抱えて帰ったら怒られないだろうか。
ふと気付くと、携帯電話が振動していた。段ボールは左肩に乗せる様にして抱え、携帯電話を取り出して開く。するとそれは電話の着信を知らせていて、表示された名前を見るとすぐに通話ボタンを押した。



「もしもし、お兄ちゃん?」

『おー色透、今買い出し中だってな』

「うん」

『じゃーついでに靴紐買って来てくんねーか?さっき俺のバッシュのが切れてよー』

「了解!」



じゃあなー、という声を残して通話が終了する。携帯電話を閉じてポケットに押し込もうとした時、それが再び震え、驚きに思わず肩が跳ねた。
すぐに開いて通話ボタンを押し、耳に押し当てる。



「もしもし」

『もしもし子犬っち?今どこっすか?』

「あと3分でスポーツショップ松井です」

『速っ!!さっき出たばっかって聞いたっすけど!?』

「黄瀬さんも何か必要ですか?」

『あーそれがね、今さっき俺のボトルが青峰っちに踏んづけられて割れちゃったんすよ!』

「新しいボトルですね、了解しました」

『頼ん――』

『――ああ、犬か?』

「緑間さん?」

『あ、ちょ、俺のケータイ!』

『外に出たならついでにお汁粉を買って来い』

「了解しました」

『個人的な頼みってありなんすか!?』

『まいう棒を箱で買わせた紫原に比べたら良心的なのだよ』

『箱!?マジで!?子犬っちに何てもん持たせるんすか!?』

「軽いので平気ですよ」

『軽いから問題ないと言っているのだよ』

『そーゆー問題じゃないっす!!』

『…二人とも、何してるんですか?』

『黒子っち!今子犬っちが買い出しに出てるんで』

『何か必要なものがあったら言うといいのだよ』

『俺の台詞ー!!』

『いえ、今は特に…』

『そうか。ならそろそろ切るぞ。犬は電話しながら走っているからな』

『それが良いでしょうね』

『てか俺のケータイなんすけ――』



ぷつり。

通話の切れた携帯電話を閉じる。箱を持ち直して前を見ると、目的地はもう目の前だった。




だいたいこんな感じ





(ただいま帰りました!)
(思ったより速かったね)
(うわ!?何すかその荷物!!にのみやきんじろう!?)
(わんわん、俺のまいう棒〜)
(お汁粉は)
(紐来たか?やっと練習再開出来る…)
(黒子さん、マジバでクーポン配ってたので貰って来ました!バニラシェイクお好きでしたよね!)
(!ありがとうございます)


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大体こんな雰囲気でやっていきます



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