光の在処
はにかむ忍び逢い

「おお、夢!はよーっす!久しぶりだなー!」
「ひっ久しぶり…おはよう」

夢が教室に入ると、教室の真ん中辺りの席で近くの男子と雑談していた西谷がパッと振り向き、右手を上げて声をかけた。
その声があんまり大きいものだから、教室にいた生徒達の視線が一気に夢へと集まってしまう。
一斉に二度見され、夢は恥ずかしくて俯きながら、黒板に貼られた座席表を見ようと一歩踏み出した。
しかし夢が教卓の前に着く前に、西谷が素早く机の間を駆け抜け、廊下側から二列目、前から二番目にある机に飛び付く。
夢がびっくりして西谷を見ると、彼はにかっと笑って机を叩いた。

「ここ!夢の席はここだぜ!さっき確認しといた!」
「あ、ありがとう」
「んで俺はここな!」

廊下側から三列目、前から五番目の席にダッシュして、机をバシバシと叩く西谷に、先程までその机を囲んで話をしていた男子達が呆れたような笑みを向ける。
夢は礼を言いながら教えてもらった席について机に鞄を下ろすと、また目の前に戻って来た西谷を見上げた。
初めて会った時とは違う黒い学ラン姿で、胸元には夢と同じ花をつけている。すこし赤らんだ頬から、興奮しているらしいことがよくわかった。

「やーっとまた会えた!まさか同じクラスんなれると思ってなかったからよ、組分け見た時マジ嬉しかった!なあなあ、いつこっちに来たんだ?」
「えっと、先週」
「先週か!俺は先週、ケータイ買ってもらったんだぜ!そうだ、後で番号くれ!メアドは合格発表の時もらったけど、番号は聞いてなかったからな!」
「うん、良いよ」

話題の転換が急過ぎて目を回しながらも、夢はなんとか頷く。
西谷は嬉しそうに笑って、思い切りガッツポーズを取った。

「よっし!高校での友達第1号だからな、最初に登録すんのは夢って決めてたんだ!」
「!」

友達、第1号。子供っぽい言葉だが、夢にはとてもきらきらした、何か素敵な称号に思えた。
胸がぽかぽかして、思わずブレザーの裾を握りしめる。
気付けば、「私も」と声に出していた。

「私も、西谷くんが…友達、宮城で初めての…だよ」
「そうか!」
「うん」
こくこくと頷く夢に、西谷は「同じだな!」と笑い返す。
――西谷の満面の笑みを見つめ、(こんなに早く、友達が出来た…)と感動していた夢は気付かなかった。

「(凸凹…)」
「(美女と小型犬…)」
「(どういう関係だ…)」

夢の容姿と西谷の大声に気を取られた生徒達が、二人の会話の様子をじっと観察していたことに。


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高校入学にワクワクし過ぎてハイテンションなノヤっさん
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