光の在処
ハレー、きみを忘れない

「受験番号?」

西谷が夢の指す先を見ると、ちょうど、掲示板の前で肩を組み、自分の番号が印刷されている辺りを指して写真を撮っている男子二人組が目に入る。
成程記念に良さそうだ、と納得し、西谷は二つ返事で答えた。

「親呼んで来る!一緒に撮ってもらおうぜ!」
「うん」

少し離れた場所で待っている母親の元へダッシュし、事情を話して急いで戻る。
急かすように背中を押す西谷に母親は不満そうだったが、夢を見るなりその表情を一変させた。

「(美人…!?)」
「夢ー、早く!皆待ってくれてっから!」
「ご、ごめん」
「俺ここー!これな!」
「あ、近い…」

西谷が指した場所より三列ほど右の方を指して、夢も掲示板の前に立つ。
西谷の母が携帯電話を構えて二人の前に立つと、西谷はにっと笑顔を浮かべた。夢も西谷に合わせて少し屈んで、少しぎこちなくだが微笑む。
何度かのシャッター音の後、西谷の母が笑顔でグーサインを出した。
それを合図に掲示板から離れ、撮った画像を確認するべく西谷が母から携帯電話をぶん取り、夢はほ、と息を吐く。人込みの中での写真撮影は視線が集まるので、解放されて安堵したらしい。

「夢、ケータイ持ってっか?無かったら親のとか」
「私の、あるよ」
「んじゃ写真送るからよ!アドレス!」
「うん。…あ」

ポケットから携帯電話を出すと、夢は小さく声を上げた。それから何か操作して、少し眉間にシワを寄せる。
その様子に何かあったのか、と西谷が首を傾げると、夢は携帯電話をポケットに戻し、残念そうに眉を八の字にして西谷に向き直った。

「ごめん、母さんの急用で、今から帰ることになったって…」
「え!?」
「迎え来たみたい…っていうか、もういる…」
「マジかよ…早っ」

夢はスクールバッグからメモ帳とペンを取出し、急いで何かを書く。そしてそのページをちぎり取ると、おそるおそる差し出した。
西谷が英数字の羅列の書かれたそれを受け取ると、夢はほ、と息を吐く。

「アドレス…私のケータイのだから。写真、後で送ってくれたら」
「…ん、わかった。次は入学式でな!」
「うん、…またね」

名残惜しそうに手を振りながら走り去って行く夢を、西谷も手を振りながら見送る。
そして、夢が角を曲がって見えなくなると、二人の様子を見ていた西谷の母が呟いた。

「…遠距離恋愛か」
「いや違ぇけど」

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