光の在処
おそろいの駆け足

「あ…、あった!あったよお祖母ちゃん!」
「本当!?」

お婆さんと手を取り合ってはしゃぐ長身を見かけて、西谷はあ、と小さな声を漏らした。
初島夢。試験当日に出会った、迷子の女の子だ。
雪の降る中で泣きそうな顔をしておろおろと歩き回っていた彼女を学校まで案内したことを、西谷はハッキリと覚えていた。
自分より十センチは高いであろう身長と、日本人離れした顔立ち、色素の薄い瞳。まるでモデル、というか、最初見たときは本当にモデルかと思ったほどだ。
実際、今も辺りの受験生や保護者達の視線を集めているのだが、本人は気付いていないようだ。

「おーい、夢!」
「っ、え…」

西谷が声をかけると、高いところにある肩がびくっと跳ねて、それからゆっくり振り向いた。
周りを見回し、すぐに西谷に気付くと、祖母らしきお婆さんに一言二言告げて、西谷の方に駆けて来る。
今のちょっと犬っぽかったな、と、西谷は頭の中に尻尾を振って飼い主に駆け寄る毛玉を思い浮かべ、それが実際の夢の動きと見事に重なって、思わず小さく笑った。

「よ!入試以来だな!」
「うん!あの時はありがとう、おかげで試験を受けられたし…」
「受かったんだろ?見てた」
「あ、うん、えっと、西谷君は?」
「俺も受かったぜ!」
「そっか、良かった」
「春から同級生だな!」
「…うん!」

くす、と笑って、よろしくお願いします、と丁寧に頭を下げる夢に、西谷も笑いながら礼を返す。
すると、視線が下がった際に夢のスカートの裾が見えて、近場では見ないカラーリングのそれに、西谷はふと、彼女が東京から受験に来ていた事を思い出した。

「…そういや、いつこっちに来るんだ?まだ東京なんだろ?」
「え、あ…うん、多分、入学式の直前くらいだと思う」
「そっか…じゃあ次会えるのは入学式か」
「そ、だね」

入学式まではまだひと月ほどある。
せっかくまた会えたのになあ、と西谷が頬を膨らませると、夢は困った様に眉を八の字に垂らしながら笑った。

「うーん、連絡先交換するにも、俺まだケータイ持ってねえしな…」
「ん…、そうだ」

夢がふと思い付いたようにハッと目を開いて、合格者の受験番号が貼り出されている掲示板を見やる。
そして、まだ受験生達の中に埋もれているそれを指差し、腕を組んで考え込んでいる西谷の肩を叩いた。

「なら、さ。記念に、受験番号の写真、撮らない?」



**********
私の母校では、玄関前に出っ張った屋根的なところから合格番号を印刷した紙を下げていたので、自分の番号探すのにずっと見上げてなきゃいけなくて首が痛くなりました。
写真も撮りづらくて、自撮りみたいのはできなかったので番号だけ写メ撮りました。付き添いで一緒に来た母さんのケータイで。受験生達が何人も並んでケータイを斜め上に構える光景はなかなかシュールでしたよ。
ニュースに出るような有名校は簡易掲示板みたいの出してて「あれいいなあ」って思った記憶があります。

あと、私の地元は受験の日雪降ってたり合格発表の日も雪残ってたりしてた気がする(記憶が曖昧)んですけど宮城ってどうなんですかね。宮城…行ったことないけど、寒いことは寒いけど雪の量自体は山形とかのが多いっていうイメージがあります。
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