光の在処
待ち続けた彦星

どうしよう。
迷子になった。

よりによって入試当日に迷子になるなんて。
時間には余裕を持っているものの、土地勘のない場所で迷子というのは心細いし、もし学校に辿り着けなかったら。
最悪の事態を想定して、顔から血の気が引いた。


「あの、どうかしました?」
「っ」

突然声をかけられ、思わず肩が跳ねる。
振り向くと、私より背の低い男の子が立っていた。ダッフルコートにマフラーを巻いて、その下はブレザーの制服を着ている。
同い年くらい、だろうか。
瞳は吊り気味だが大きいので威圧感がなく、きょとん、とした様子で私を見ていた。

「…あ、あの…この辺の方、ですか」
「?はい」
「!」

彼は、あっちらへんに住んでる、とどこかを指して告げると、それが何か、と首を傾げた。
私は思わず胸を押さえて深く息を吐く。安堵の息を。寒さで白く染まったそれは、すぐに空に溶けて消えてしまった。
ああ、助かった。
心の中で呟いて、私はカバンから一枚の紙を取り出し彼に見せた。

「烏野高校への行き方を、教えてくれませんか」
「え、…あっ!受験生!?」
「…そうです」

また、この身長のせいで中学生に見られなかったのかもしれない。
彼はひどく驚いた様子を見せて、けれど、それからニカッと爽やかに笑った。

「なーんだタメかよ!俺も烏野受けるんだ、どうせだし一緒に行こうぜ!」
「い、良いんですか」
「おう!」


そうして私は、西谷くんと出会ったのだ。


「あ、俺西谷夕な。千鳥山中」
「えっあ、初島夢です…学校は、東京の…」
「東京!?何で東京からわざわざ烏野を受けに来たんだ?」
「お祖母ちゃんが一人暮らししてたんだけど、心配だからって春から同居することになって…」
「あー、成程!」



**********
ノヤっさんの口調が迷子
prevnext
back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -